いわき市の小名浜港と常磐道を結ぶ復興再生道路「小名浜道路」について、県が今年夏ごろ開通の見通しを示した。
延長8・3キロ、無料の自動車専用道路で、常磐道に接続する「いわき小名浜インターチェンジ(IC)」が新設される。いわき湯本、いわき勿来両ICから小名浜港までの所要時間がこれまでの約30分から、約13分へと短縮される。
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を受けて、整備が進められる復興再生道路のうち、まったく新しく設けられた唯一の路線だ。物流と観光の強化を狙いとしており、ほかの路線に比べ、県の戦略性が色濃い。開通の効果をいわき市、浜通りの産業にどう生かしていくかが問われる。
いわき市の物流会社の担当者は「小名浜港へのアクセスが良くなることの影響は大きい。この道路が日本と東北の物流拠点である東京と仙台との中間地点にある港の利点を高めることにつながれば、いわき地区の産業にも波及効果が期待できる」と話す。
小名浜港は東日本で唯一、石炭を取り扱う大型輸送船の受け入れ拠点となる「国際バルク戦略港湾」に指定され、大型船の停泊できる東港の整備などが進められてきた。2033年度までには防波堤の整備が完了し、安定して船が入出港できる環境が強化される見通しとなっている。
港と道路の整備は、いわば車の両輪だろう。県などには道路の開通を、石炭以外の輸出入取扱量の増加などにつなげていくことが求められる。
小名浜道路は災害時の活用も視野に、ほかの復興再生道路よりも幅員を広くし、斜面の崩落などがあっても車線を確保しやすいよう設計されている。小名浜港は東日本大震災後、支援物資の受け入れに大きな役割を果たしたことがその理由だ。
災害時の基幹道路に位置付けられている常磐道と接続していることを踏まえれば、浜通りや磐越道を通じた県内全域への支援物資受け入れで震災時よりも重要度は増す。万が一にも道路が十分に機能しないということがないよう、維持、管理を徹底してほしい。
いわきの主要な観光地である海水浴場やアクアマリンふくしまを擁する沿岸部と、温泉街や観光施設スパリゾートハワイアンズのある湯本地区の移動時間が短縮されることは、観光面での好影響も期待できる。開通時には大きな注目が集まるだろう。今夏をにらんで、観光振興策を十分に練っておくことが必要となる。