開票作業の省力化や時間の短縮に実績はある。デジタル環境の進展を踏まえ、多くの自治体で実施を検討する時期ではないか。
有権者がタッチパネルなどを使い投票する「電子投票」が昨年12月、大阪府四條畷市の市長選で行われた。国内の自治体選挙での電子投票は8年ぶりだった。
タブレット端末を投票所に配備し、有権者は画面に表示された候補者名をタッチして投票した。ネットワークに接続せず、端末ごとにUSBメモリーなどに記録し、開票所のパソコンで集計した。
市選挙管理委員会によると、開票の集計時間は正確性を重視したため、前回並みの約1時間40分だったが、作業に当たる職員は従来の3分の1に減ったという。職員が作業に慣れれば、さらに開票時間は短縮可能だろう。
電子投票は地方選に限り、2002年に解禁された。総務省によると、これまで大玉村など全国10市町村で条例を制定するなどして実施された。同村では03、07年の村議選で行われ、07年の電子投票分の開票は3分で終了している。
職員の負担軽減のほか、書き間違いなどによる無効票や疑問票の防止も図れる。人口減少に伴い、選挙事務を担う職員や立会人の確保に苦慮している自治体にとって有効な手段になるはずだ。
8年の空白期間が生じたのは、機器などのトラブルが理由だ。岐阜県可児市の市議選で機器の異常で一時投票ができなくなり、裁判で選挙自体が無効になってしまった。別の自治体でも機器の不具合が相次ぎ、専用の機器を貸し出す事業者も撤退したことで、電子投票を実施できない状況にあった。
総務省が20年に専用の機器以外にもタブレット端末などを活用できるよう運用指針を見直したことで、実施できる環境が整った。四條畷市では期日前投票で端末の不具合が1件あったが、投票に支障はなかった。国や企業は連携してミス防止の技術開発などに取り組み、自治体の不安や懸念の解消につなげてほしい。
電子投票が広く普及すれば、関連機器のコスト低減などにつながるため、自治体からは国政選挙での導入を求める声も上がる。しかし国政選挙への導入を目指す法案は情報管理の安全性などへの懸念から08年の通常国会で廃案となって以降、制定への動きはない。
政府がデジタル化を推進している状況を踏まえれば、国政選挙での導入は自然の流れだ。政府や国会は事務処理の正確性や利便性を高めるため、国政選挙での導入について改めて協議すべきだ。