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【1月14日付社説】公益通報/不当な処分の抜け穴なくせ

2025/01/14 08:10

 食品偽装や特別背任など勤務先の不正に気付き、声を上げた人への報復行為は組織の自浄機能を阻害し、場合によっては市民生活に深刻な影響を及ぼす。企業や行政などは、通報者の保護が最優先だと肝に銘じる必要がある。

 不正を組織内の窓口や報道機関などに告発する公益通報を巡り、消費者庁の有識者検討会が、政府に通報者の保護に関する法改正を求める報告書をまとめた。通報者への報復となる解雇や懲戒処分を抑止するため、処分した企業や団体、上司ら個人への刑事罰を導入すべきだなどとした。

 現行法でも通報を理由とした解雇は禁止されているが、報復を受ける例が後を絶たない。兵庫県知事のパワハラ疑惑や国見町の救急車問題などでは、通報者の特定や調査段階での処分など、さまざまな問題が浮き彫りとなった。

 通報者を不当に処分することで不正を隠そうとしたり、見せしめにして職場内の人を萎縮させたりする行為は許されない。刑事罰の導入は理解できる。

 懲戒処分ではない降格や配置転換などについては、違法行為の範囲や定義の検討が必要とし、罰則の対象から外れた。定期的な人事評価との区別が難しいからだ。

 報告書によると、解雇しなくても、組織側が退職勧告やハラスメントなどで通報者を退職に追い込むケースがある。報復行為の抜け穴をなくすことが重要だ。

 検討会による事業者への聞き取りでは、仕事をしたくないなど個人的な理由とみられる通報が少なからずあると指摘された。消費者庁には、虚偽情報を含めて通報の実態を調査し、乱用を防ぐ方策を検討することが求められる。

 公務員には、業務に関して犯罪が疑われる行為がある場合、刑事訴訟法に基づき告発する義務がある。検討会はこれを踏まえ、「公務員として積極的に法令違反の是正に協力すべきだと考えられる」との見解を示した。しかし、実際には守秘義務などが公益通報のハードルとなっている。

 国見町の問題では、町による特定の業者への便宜供与疑惑を告発しようとした職員が、職務権限を逸脱した情報収集を理由に処分され、不服を申し立てた。職員の情報収集については、自身の権限で閲覧できる範囲の情報などを不正の告発のために集めるのは正当だとする専門家の指摘がある。

 公務員の萎縮を招かぬよう、課題の解決が欠かせない。消費者庁は、兵庫県や国見町などの問題を検証し、保護されるべき行為などを分かりやすく示すべきだ。

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