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【1月19日付社説】メタの検証廃止/情報の信頼を損なう判断だ

2025/01/19 08:05

 偽情報などへの厳格な対応が求められるなか、時代の流れに逆行した判断と言わざるを得ない。

 米IT大手メタが、フェイスブックなど同社が運営する交流サイト(SNS)の投稿内容について、第三者機関によるファクトチェック制度を米国で廃止すると発表した。規則の過剰な適用、政治的な議論の制限などの「行き過ぎ」があったとしている。日本では制度を廃止する予定はないという。

 投稿者の「表現の自由」を保障することが前提になるが、現在、SNSには事実と異なる情報やデマが流布し、中傷や差別などの被害が相次いでいる。犯罪の温床となったり、選挙などに影響を及ぼしたりもしている。

 ファクトチェックは偽・誤情報の拡散を防ぎ、利用者に健全な情報交流の場を提供することが目的だ。SNSの運営事業者の多くが社外機関に投稿内容の検証を依頼し、偽・誤情報と判定された投稿を削除するなどの対応を進めている。メタは第三者機関による真偽の検証を継続すべきだ。

 今回の廃止方針は、投稿の管理に批判的なトランプ次期米大統領や共和党支持者に配慮したとみられる。メタはすでにトランプ氏に近い人物を取締役に起用するなどして、次期政権との関係構築に力を入れている。政治権力との関係を重視するばかりに、公共性が高く、社会への影響力のあるSNSの安全性や信頼性を損ねることは看過できない。

 現行のファクトチェック制度に過剰な規制、政治的な偏りが懸念されるのであれば、その仕組みを改善することが運営事業者の務めではないか。投稿の削除基準などを明確に示し、利用者の理解を得ていくことが重要だ。

 米次期政権で要職に就くイーロン・マスク氏がオーナーを務めるX(旧ツイッター)は、投稿管理を縮小し、利用者が相互に信頼性や文脈に関する情報などをコメントとして提供し合う「コミュニティーノート」という仕組みを導入している。メタも同様の対応を検討している。

 Xでは新制度の導入以降、誤情報や差別的な投稿が増えたとされる。利用者のコメントなどに依存した対策では情報の修正に時間がかかり、その間に誤った情報が拡散する恐れもある。事業者の主体的な仕組みの構築を求めたい。

 投稿者や情報を拡散した人が金銭的な対価を得られることも、偽・誤情報の氾濫を生み出している要因だ。虚偽や有害な情報を繰り返し投稿する人に、利益がもたらされない措置も検討してほしい。

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