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【1月22日付社説】トランプ新政権/国際秩序の安定図る戦略を

2025/01/22 08:00

 日本政府には、米国に振り回されるのではなく、主体的に国際秩序の維持を先導していくことが求められる。

 米国大統領にトランプ氏が再就任した。就任演説では自国産業の保護に向け各国に関税を課し、不法移民対策を進めるとした。気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」からの再離脱も表明し、化石燃料重視を鮮明にした。1期目に掲げた「米国第一」の姿勢を改めて強調した形だ。世界保健機関(WHO)からの離脱も表明した。

 関税の大幅引き上げは、世界経済を冷え込ませる恐れが大きい。世界最大の経済大国が気候変動や感染症への対策に背を向けることは、さまざまな分野で国際協調の流れを妨げかねないものだ。新政権の動向を各国が不安視するのは当然だろう。

 関税引き上げの影響は貿易相手国にとどまらず、価格に上乗せされた分の負担が米国の産業や経済を圧迫するとの指摘がある。気候変動はハリケーンの大型化などにつながっているとみられ、米国とて無関係ではいられない問題だ。

 トランプ氏が意識を向ける中国も、こうした動きが米国の影響力低下につながると好感している節がある。国際社会はトランプ氏に対し、経済や環境などへの対応を混乱させることは必ずしも「米国第一」につながらないことを根気強く説明していく必要がある。

 安全保障面での懸念も大きい。イスラエルとハマスの停戦は新政権も関与して実現したものの、いまだ流動的だ。トランプ氏が意欲を示すロシアとウクライナの停戦も、仮にロシアが領土などの利を得た形となれば、台湾への圧力を強める中国の動向にも影響しかねない。米国の仲介があしき前例とならないよう、国際社会が注視していく必要がある。

 米国が中国との対立姿勢を強める中、東アジアの同盟国である日本は、新政権による影響が他国ほど大きくないとの見方がある。石破茂首相は新政権への対応について「日本の国益を体現して主体的にものを言っていかなければならない」と述べている。

 日本が太平洋戦争後、復興を遂げ、経済大国の一つに数えられるようになったのは、米国などが主導する形で国際秩序が安定し、公正な貿易環境が保たれてきたことが大きい。その環境を守ることこそが、日本の国益を守る最善の手段だろう。

 首脳同士の関係構築を図りながら、どう米国を国際社会の中枢にとどめ、成長の基盤を守っていくのか。日本の戦略が問われる。

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