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【1月23日付社説】日本語教育/外国人から選ばれる環境を

2025/01/23 08:15

 日本語は外国人が安心して暮らすための基盤だ。県や市町村には、地域や学校などでの教育環境を充実させることが求められる。

 県が、教育環境の整備や人材育成などを盛り込んだ日本語教育に関する初の指針を策定した。民間団体などが運営する日本語教室との連携や、指導のノウハウの共有などに取り組む。

 策定の背景には外国人住民の増加がある。2023年12月現在で1万7千人を超え、県人口に占める割合が初めて1%を上回った。人口減少に伴う労働力不足を補うため、政府は外国人の受け入れ拡大を進めており、就業者やその家族は今後も増える見込みだ。

 来日前に日本語を学ぶ外国人は少なくないが、習熟度は一様ではない。言葉が分からないと仕事を覚えるのに時間がかかったり、進学や就職が難しくなったりする。来日後も日本語教育が欠かせないものの、地域でその役割を担う教室は県内約30カ所にとどまる。

 日本語を学ぶ環境の乏しさは、外国人が居住地を決める上での減点材料になると指摘されている。市町村は、ニーズがあるにもかかわらず、日本語教室がない空白地域を解消することが重要だ。

 県内の学校には、日本語指導を必要とする児童生徒が100人ほど在籍している。近年は家族帯同による未就学児が急増しており、支援対象は増える見通しだ。

 県教委によると、指導を必要とする子どもが多い学校には教員が加配されている。今後は加配のない学校を含めた研修で、翻訳機器を使った実践事例などを共有し、指導力の向上を図るという。

 指導を必要とする子どもの数が全国で最も多い愛知県では、日本語を話せない子どもたちが地域の拠点となる小中学校に4カ月ほど通う「初期指導教室」を開設している。基礎を集中して学んだ後、本来の学校に戻る仕組みだ。

 日本語を習得し、学校生活になじんでいくためにはきめ細かな指導が欠かせない。県教委などは、先進地の取り組みを参考に、指導体制を強化することが急務だ。

 外国人就業者やその子どもらの学ぶ意欲を高めることも大切となる。在県ベトナム人協会長の沢上チャンさんは「最初は言葉が話せないから口が堅くなるが、日本語が分かってくると話すのが楽しくなる」と語る。

 県や市町村などは、地域のイベントや祭りなどへの参加を呼びかけ、外国人と住民が交流する機会をより多くつくる必要がある。住民は分かりやすい日本語を心がけ話しかけてほしい。

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