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【1月24日付社説】通常国会開幕へ/地方の視点で丁寧な議論を

2025/01/24 07:53

 政府、政党間の駆け引きに終始する国会では、山積する課題の解決はおぼつかない。丁寧な説明と議論を重ねることが求められる。

 石破政権にとって初めての通常国会がきょう召集される。与党が衆院で過半数に満たない状況で、2025年度予算案を年度内に成立できるかが最初の関門になる。

 昨年の臨時国会では、24年度補正予算案に日本維新の会と国民民主党が賛成した。政府、与党は教育の無償化や「年収103万円の壁」の引き上げなど、野党の政策を一部受け入れることで成立にこぎ着けたが、与野党間の議論はいまだ結論を得ていない。

 最大野党の立憲民主党は政府予算案の無駄を精査し、修正を目指す構えだ。ただ野党が主張する政策にも巨額の財政出動を伴うものが含まれる。政府、与党が予算案への賛成を取り付けるため、十分な議論を経ずに野党と合意するのは適切な政策決定過程ではない。

 野党が主張する政策についても与野党がその効果と財源の裏付けについてしっかり見極め、責任ある結論を導き出してほしい。

 予算案の審議と並行し、「政治とカネ」の問題を巡っても激しい論戦が想定される。野党側は引き続き、自民党の派閥裏金事件を追及する構えだ。裏金事件は東京都議会の政治団体でも新たに判明した。派閥にとどまらず、地方組織でも裏金づくりが明らかになったことで、国民の政治への信頼回復はさらに遠のいてしまった。

 裏金による資金還流の仕組みを解明し、実効性ある対策を講じることが急務だ。再び同様の事案を起こさないためにも、与野党で意見が分かれる企業・団体献金、政治資金パーティーの取り扱いについて早急に決着すべきだ。

 石破茂首相は、賃上げを成長戦略の要と位置付け、物価上昇を上回る賃上げを実現し、経済全体の生産性向上を目指す考えだ。しかし、地方の雇用を支える中小零細企業は、賃上げによるコスト上昇分が大きな負担となっている。

 首相は看板政策に地方創生を掲げている。ただ現時点では政府機関の地方移転、都市と地方の2拠点生活の推進など、これまでの取り組みの域を脱していない。

 経済再生、人口減少対策などの重要課題は、地方の視点に重きを置いた施策が不可欠だ。地方創生の第一人者を自任するのであれば首相は厳しい現状を打破する施策を明確に打ち出してもらいたい。

 通常国会後は参院選が控える。与野党ともに党利党略に走ることなく、活発な論戦を通じて国民に判断材料を示す必要がある。

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