福島国際研究教育機構(エフレイ)は、ロボット分野の研究開発の方針をまとめた。最上位の目標には、人の関与が難しい過酷な環境下で、遠隔操作などを通じて十分な性能を発揮できる技術の確立を掲げている。
エフレイは2023年4月の開所以降、ロボット開発を重点的な研究分野の一つとし、研究者の確保を進めてきた。その結果、複数のロボットやドローンが現場で自律的に動く「群制御」の技術の開発など複数の核心的な研究を並行して進め、かつそれらの成果を組み合わせた応用研究の実施も視野に入ったことから、改めて方針を示した。
基本的には触覚をデータ化して遠隔でも人のような繊細な動きができる技術などを使いながら、災害現場や東京電力福島第1原発の廃炉現場などでの活用を目指す。ただ、限定された用途での使用にとどめることはせず、インフラ点検や物流の無人化など、平常時にも利活用できる技術としての開発を前提とする考えだ。
研究者の一人が「5~10年後に必要とされる技術をつくる」と語るように、地域社会や産業分野に役立つ平常時の利活用を重視した方針を掲げたことは評価できる。エフレイには開発した技術の積極的な実用化を進め、浜通りを中心とした省力化による生活サービスの向上や新産業の創出を実現してもらいたい。
エフレイは応用研究の主要なテーマとして、「森林作業ロボティクス」を入れている。稼働時間や積載重量などを大幅に引き上げる水素燃料電池ドローンの開発などを踏まえ、浜通りの阿武隈山系での木材の伐採や運搬など、森林管理に関わる作業の全自動化を目指していく計画だ。
阿武隈山系での森林作業の自動化は、担い手の高齢化が進む林業の再生に加え、原発事故後から手が加えられていない帰還困難区域の森林の管理を進めるきっかけとしても期待される。今後は山間部で「特定帰還居住区域」としての避難指示解除も進む。エフレイが国や自治体と協力し、新技術による森林整備を環境再生や住民帰還につなげていくことが重要だ。
ロボット分野を巡っては、4月にエフレイと「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市、浪江町)が統合される。エフレイにとっては、実験拠点を得ることに加え、施設で活動してきた企業との接点ができる。研究者の発想を実際の機器として形にするため、浜通りのものづくりネットワークの再構築にも全力を注いでほしい。