大阪・関西万博は4月13日の開幕まで3カ月を切った。世界中の国々が一堂に会する、5年に1度の万博開催は、日本では愛知万博以来20年ぶりとなる。
1851年にイギリス・ロンドンで開催された最初の万博から産業技術や科学技術、芸術文化の発信の場とされてきた。近年は自然環境やエネルギーなど、持続可能な社会づくりに向け、人類の英知を結集する舞台になっている。
今回は「いのち」をテーマに、158カ国・地域が参加する。各地で紛争が相次ぎ、分断と対立が深まる難しい国際情勢のなか、各国が地球規模の課題解決のために力を合わせる意義は大きい。生命の未来について考え、その新たな可能性を探る機会にしたい。
大阪・関西万博は半年間の会期中、2820万人の来場が想定されている。大阪府内は至る所にPRポスターが掲げられ、公式キャラクター「ミャクミャク」がデザインされた電車やバスが運行している。会場の人工島・夢洲に直結する地下鉄の新駅も開業した。
しかし、国内全体の機運は低調だ。民間調査機関が昨年10月に行った全国意識調査では、万博に関心のある人の割合が24%にとどまる。実際、前売りチケットの販売は目標の半分に伸び悩んでいる。
低調の要因の一つが情報の少なさだ。世界最大級の火星隕石(いんせき)の展示、次世代の移動手段「空飛ぶクルマ」のデモ飛行などが公表されているものの、展示詳細が判明していないパビリオンが多い。
万博の運営費の大半は入場料収入で賄われており、赤字となれば公費負担などを余儀なくされる恐れもある。政府や大阪府・市、運営主体の日本国際博覧会協会は、万博の魅力や展示内容、イベントなどの発信力を強化すべきだ。
会場のシンボルとなる全周2キロの木造巨大屋根「リング」の約3分の1の木材には、浪江町の施設で製造された集成材が使われており、その集成材の一部には県産材のスギが活用された。
5月には東日本大震災の被災3県の復興状況や防災・減災の取り組み、東京電力福島第1原発事故による風評被害などが起きた浜通りの水産品など食の魅力を伝えるイベントが行われる。7月は本県単独でホープツーリズムや農産物、県産品などをPRする予定だ。
万博には世界中から350万人の訪日客の来場が見込まれる。本県の復興状況、さまざまな支援に感謝の気持ちを伝える貴重な機会だ。復興庁と県は、説明の多言語化などを進め、本県の歩みや現状、未来の姿を伝えてもらいたい。