双葉町は、町内に設置する新学校を2028年4月に開校することを決めた。建設場所は旧双葉中の敷地内で、認定子ども園と義務教育学校、学童保育を一体的に整備する。新年度からは、開校に向けたハード、ソフト両面の取り組みが加速する見通しだ。
双葉町の教育を巡っては、東京電力福島第1原発事故による全町避難が長期化したため、町立の幼稚園と小中学校は、現在もいわき市を拠点に活動している。町内には1~15歳の子どもが十数人生活しているが、いずれも近隣自治体の施設に通っている。
新学校は、町内での子育て環境を再生する中核施設として整備され、教育方針の柱には国際感覚とコミュニケーション能力を持った人材の育成を掲げている。子ども園に在籍する幼少期から、英語を中心とした外国語に触れる環境を整えるなどして、成長とともに自然と語学力を伸ばすことができるようにする。
語学や多文化理解を軸に据えた教育方針は、次世代の教育ニーズに応じた取り組みとしてだけではなく、浪江町で整備が進む福島国際研究教育機構(エフレイ)に勤務する外国籍研究者の子どもたちの就学の受け皿を担うという側面もある。町教委は、新学校の教育環境を選んで帰還や移住、通学を考える人が増えるよう、カリキュラムの充実に力を注いでいくことが重要だ。
新学校は、施設を教室などの「学校専用スペース」と、児童生徒とともに地域住民も利用できる「共創スペース」に分けて運用する方針だ。共創スペースには、一般書を含めて3万冊程度をそろえる予定の学校図書館、ものづくりや実験などができる特別教室、体育館などを想定している。
町は、JR双葉駅周辺で住宅や商業施設の建設を進めてきたものの、生涯学習などに関連した施設の整備にまだ着手できない状況にあり、学校施設の活用は住民の生活の質の向上につながることが期待される。町と町教委は、入室管理システムを導入するなどして安全面を確保しながら、新学校を地域の結びつきを生み出す場として役立ててほしい。
新学校の開校により、いわき市にある幼稚園と小中学校は28年3月で閉校となる見通しだ。いわきの校舎には、いわき市や双葉郡の他の町村の児童生徒も含めて約40人の子どもたちが学んでいる。町教委には、新学校への進学や近隣校への転校など、一人一人の希望に向き合った丁寧な対応を心がけてもらいたい。