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【3月19日付社説】投資詐欺/悪質広告抑える法規制急げ

2025/03/19 08:00

 道に落とし穴があるならば、それをふさぐのが被害防止の最善策だ。注意喚起だけでは被害はなくならない。

 交流サイト(SNS)を介した投資詐欺と恋愛感情に乗じたロマンス詐欺が深刻化している。警察庁のまとめによると、昨年1年間の被害額は2023年から約812億8千万円増の約1268億円で過去最悪だった。本県は同約9億5千万円増の11億7951万円で急増している。

 県警によると、最初の接触に使われたSNSは、インスタグラムやティックトックなど、多くの人が利用するものが目立つ。マッチングアプリも1割強を占める。接触後には約9割がLINE(ライン)で連絡を取り、インターネットバンキングで送金した金をだまし取られるケースが多い。

 SNSやインターネットバンキングは急速に普及し、生活に欠かせないインフラとなりつつある。そのインフラが犯罪の温床となっているのは憂慮すべき状況だ。

 主要SNSを少し利用するだけでも、有名人が金もうけの秘策を教えるなどという、不審な広告を目にする。犯行グループから被害者に接触するなりすまし詐欺とは異なり、自ら広告をクリックしたり、恋愛感情で冷静な判断ができなくなったりする。自ら犯行グループのわなに入り込んでしまうのが、この詐欺の特徴だ。

 こうした広告をクリックしないのが最良の策であるのは理解できる。ただし、行政や捜査当局の対策の軸が注意喚起にとどまり、環境そのものの浄化に踏み込めていないのは問題だ。いくら利用者に注意を促しても、治安の悪い場所を放置しておけば、犯罪が増えていくのは避けられまい。

 総務省の有識者会議は昨年9月、投資詐欺とみられる広告などを巡り、SNS事業者に対して事前審査基準の策定、公表を求める提言をまとめた。大手SNSの多くが海外事業者の運営であるのを踏まえて、日本に関する十分な知識を持った人員が広告の審査に当たるようにすることも盛り込んでいる。政府は提言を踏まえて法整備を検討しているものの、今国会に提出できていない。

 SNSの浄化には、金をだまし取るのを目的とした悪質広告を根絶することこそが最善の策だ。世代を問わず利用されているサービスで金銭被害が多発しているのであれば、是正を事業者の自主性に任せてはいられない。捜査当局による犯罪グループの摘発と並行し、悪質広告の排除に向けた法規制を急ぐ必要がある。

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