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【3月22日付社説】県商工信組の不正/組織の負の風土を直視せよ

2025/03/22 08:05

 二重三重に積み重なった不正が一気に噴出した形だ。顧客や地域社会からの信用を取り戻すのは容易ではない。組合員の企業や個人を支える金融機関として、再生に向けた覚悟が問われる。

 財務省東北財務局は、県商工信用組合(郡山市)で2008年~昨年9月に職員関与の預金着服などの不正が計10件あり、うち8件について前理事長ら旧経営陣が隠蔽(いんぺい)していたなどとして業務改善命令を出した。不正の累計額は1億1247万1517円に上る。

 隠蔽に加え、現理事長が弁護士による第三者調査に対し監視カメラ映像を消去、財務局から求められた議事録を改ざんするなど法令順守態勢に重大な問題があったとしている。

 同信組では不正があった08年から昨年までの間、今回公表の事案とは別に、職員2人が横領で立件され、それぞれ有罪判決を受けている。こうしたことがありながら、不正を隠蔽し、内部での処理で済ませてきた同信組の姿勢は、金融機関としての企業倫理に欠けるとの批判を免れない。

 同信組は、隠蔽は前理事長と前理事・監査部長が主導し、必要な懲戒処分をせずに監督官庁への報告もしなかったと認めている。ほかの一部役員も不正を黙認していたという。

 着服などは職員個人の行為であるとしても、隠蔽は組織ぐるみの不正だ。今回公表した事案は、財務局から22年に不正の指摘があり、内部調査で確認された。その後、第三者調査を行うなどしながら、業務改善命令を受けるまでそれらを公表せずにいたのは、顧客や地域社会に対する説明責任をないがしろにするものだ。

 今後注視しなければならないのは、同信組が自ら自浄作用を強めることができるかだ。財務局は同信組に提出を求めた資料などの改ざんを問題視しており、現経営陣への不信感も強くうかがわれる。

 第三者調査の報告書は、旧経営陣の主導的な関与が組織に誤った意識を横行させ、さらなる不正を生んだ懸念があると指摘している。その上で、再発防止に取り組むこととなる現経営陣についても「組合の負の組織文化に自らも影響を受けている懸念がある」とし、企業風土の改善が必要との考えを強調している。

 財務局は同信組に対し、来月上旬までの業務改善計画提出と、3カ月ごとの取り組み状況の報告を求めている。まずは改善計画で、自らの組織風土の負の側面に向き合い、抜本的な対策を示すことが信頼回復の第一歩となる。

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