イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意が崩壊の危機に直面している。イスラエルは直ちに攻撃をやめ、対話を再開すべきだ。
イスラエルが、パレスチナ自治区ガザへの攻撃を再開した。400人以上が死亡した18日の大規模空爆以降も爆撃が続いている。
1月に発効した停戦合意の第1段階として、ハマスが拉致した人質とイスラエルの拘束者の交換が進められた。ただ、第1段階の期限だった今月1日以降の対応を巡って双方の意見が食い違い、交渉は行き詰まった。
イスラエルは、第1段階の暫定的な延長と人質の追加解放をハマスに迫っている。一方のハマスは、恒久的な停戦を含む第2段階への移行を求めていた。
人質解放交渉の難航を理由に、イスラエルはガザへの支援物資の搬入と送電を停止している。攻撃再開でさらに圧力をかけた形で、ネタニヤフ首相は「戦火の下でのみ、交渉を続ける」と述べた。
ネタニヤフ政権には停戦合意に反対する極右政党が加わっている。政権を維持するために攻撃を再開したとの指摘もある。
自国の要求や都合を優先し、人命を踏みにじるのならば、人道無視のそしりは免れない。ネタニヤフ首相の暴挙を断固非難する。
イスラエルによる20日の地上作戦で拠点を攻撃されたハマスは、ロケット弾で反撃した。自衛の側面があるとはいえ、報復の連鎖は再びガザを戦場に戻しかねない。ハマスには自制が求められる。
イスラエルの意に沿って第1段階延長などを提案したのは、停戦合意の仲介国の一つである米国だ。交渉の難航に、トランプ大統領も不満を示していた。
米報道官は、イスラエルが事前に攻撃再開を米側に通告していたことを明らかにした。加えて、大規模空爆後のイスラエルの行動を全面的に支持すると表明した。
イスラエルを擁護して強硬路線を支え、紛争を泥沼化させてきた責任の一端は米国にある。トランプ大統領は、紛争当事国から仲介国へと軸足を移し、イスラエルに停戦維持を強く促すべきだ。
攻撃再開は、パレスチナを支持するアラブ諸国の反発を招いている。さらにはハマスに連帯する武装組織や、その後ろ盾となっているイランを刺激し、中東情勢が一層、不安定になる恐れがある。
停戦合意を維持するため、仲介国のカタールとエジプトが続けている関係国への働きかけを、さらに後押しする必要がある。日本など国際社会は、緊張を解くための方策を尽くしてほしい。