開催地の負担軽減と、地域に活力を与える取り組みの両立を図ることが求められる。
国民スポーツ大会(旧国民体育大会)の改革について、日本スポーツ協会の有識者会議が提言をまとめた。多数の競技を秋に集中的に行う現行の開催方式を改め、トップ選手が参加しやすい時期に各競技を分散させる「通年開催化」を柱に据えている。
現在、国スポには冬季大会を含め約40競技に選手・監督が約2万7千人参加している。しかし一定期間内に競技が開催されるため、競技施設や宿泊先の確保、輸送などが開催地の負担となっている。
提言には現行の各都道府県の持ち回り方式のほか、複数の都道府県での開催、開催地の固定化も盛り込まれた。開催地にとっては大会の運営経費だけでなく、準備のための負担も大きい。固定化すれば運営のノウハウが継承され、経費節減なども見込める。
分散開催では大会の一体感や盛り上がりの欠如などが懸念されるものの、すでに全国高校総合体育大会で実施されている。改革は開催地の負担軽減、大会自体のスリム化が主眼であり、提言はそれに沿った内容だ。国や日本スポ協は、開催地の負担軽減を最優先に検討すべきだ。
有識者会議は、大会理念として「トップアスリートと地域スポーツの好循環」を提示した。国内外の主要大会の日程を踏まえ、トップ選手が出場し、大会の価値をより高めることが狙いだ。
ただ、日本代表クラスの出場を実現するのは容易ではない。最近は国際大会を転戦し、海外で合宿なども行う競技や選手が増えている。国際大会で獲得したポイントが五輪などの出場資格に関わる競技もあり、トップ選手が国スポに出場する利点は少ない。
各競技団体が国スポをどう位置づけ、出場を促していくかが鍵となる。選手強化費の給付条件に国スポへの出場を求めることや、大会参加要件の緩和など、各競技団体は知恵を絞ってほしい。
国スポは地方でハイレベルの試合を観戦できる数少ない機会だ。ジュニアの選手や指導者への刺激となり、地域の競技力向上にも貢献してきた。開催地の魅力を多くの人に発信でき、地域経済への波及効果も少なくない。
提言は国スポを地方創生に生かすことを重視している。都道府県対抗で争う数少ない大会であり、選手や観戦者が郷土愛を実感する場でもある。今後も継続を目指すならば、地域に恩恵をもたらす大会にすることが大切だ。