これから数十年続く廃炉作業を着実に進めるため、原発頼みの計画からの脱却が求められる。
東京電力ホールディングス(HD)が、福島第1原発の廃炉と事故賠償の費用確保を目的に策定している経営再建計画「総合特別事業計画」の一部を見直した。2021年の第4次計画まで数年ごとに改定を重ねてきたが、今回は柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働時期が不明で収支の見通しが固まらず、抜本的な改定を見送り、暫定版を示して国が認定した。
4次計画は賠償と廃炉のため年5千億円程度を確保し、年4500億円規模の利益を得ることを目標としていた。しかし業績は振るわず、賠償と廃炉の費用を十分に捻出できていない。
原発事故後、東電は経営破綻を避けるため事実上国有化されており、今回の見直しで国に1兆9千億円の追加支援を求めた。事故対応に必要な費用の試算は11年当時に見込んでいた6兆円から23兆4千億円に膨らんでいる。
東電HDによる事故対応費用の上振れは、これまでも繰り返されてきた。経営陣は見通しの甘さを猛省すべきだ。計画を認定した国の責任も大きい。
原発の再稼働を収支改善の柱に据え続けていることにも問題がある。現計画は22年度以降、柏崎刈羽の最大3基が再稼働する前提だったが、いまだ地元の同意を得られていない。さらにテロ対策施設の完成も大幅に遅れる見通しとなり、再稼働は実現できていない。
東電は今回の見直しで、原発1基が再稼働した場合の収支改善効果を年約1千億円と見込み、25年度に1基が再稼働する前提に修正した。需要の高い首都圏に安定的に電力を供給できれば、収益確保につながるとはいえ、その実現性が疑わしいのは否めない。
東電は合理化などコスト削減を徹底する構えだ。一方、電力需要の増加への対応、送電網の増強など新たな投資も必要になっており、合理化の取り組みなどでそうした費用を賄えるかは不透明だ。やはり再建計画の大幅な見直しは避けられないだろう。
東電は再生可能エネルギーの関連事業などに積極的に取り組んでいる。原発以外の成長分野により比重を置き、収益拡大を図ることを目指すべきだ。
福島第1原発の廃炉作業はようやくデブリの試験的な取り出しが始まった段階であり、事故対応費用は今後も膨らむ恐れがある。国はこれまで以上に厳しく東電を指導・監督し、経営基盤の強化を実現させなければならない。