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【6月20日付社説】いわきの官製談合/組織風土の改革が不可避だ

2025/06/20 08:05

 いわき市水道局の工事を巡り、誤った価格設定で行われた入札が最低制限価格と同額で落札された問題は、水道局職員らが逮捕される官製談合事件に発展した。逮捕容疑が事実であれば、水道局の組織風土に問題があったといえる。市は不正な入札を猛省し、再発防止に取り組まなければならない。

 問題となったのは2024年1月に行われた、平下平窪配水管改良工事の一般競争入札だった。今回逮捕された水道局職員が、誤って前年度の単価を入力して最低制限価格を算出したにもかかわらず、業者がその価格と1円単位まで同じ価格で落札した。外部への情報漏えいが疑われ、有識者による調査確認委員会が設置された。

 調査委は報告書で、民間の積算システムの精度が向上している状況を踏まえ「同額で入札することは可能」としながらも、誤った最低制限価格が一致したのは「不自然」と指摘した。職員が情報を漏らすなどの不正があったかどうかは判別が難しいとされたが、市が原因究明のため県警に情報提供していた経緯があった。

 市は職員の逮捕を受け、内田広之市長と山田誠水道事業管理者が会見し「市政全般の信頼を揺るがしかねない重大な事態」と謝罪した。水道は住民の重要なライフラインで、今後も恒常的に工事発注が行われる分野だ。市は、職員を監督する立場にあった関係者の責任を明確にして綱紀粛正の第一歩とする必要がある。

 調査委が行った聞き取り調査では、水道局職員の2割が設計価格を聞かれるなどの不正な要求を受けていたことが分かった。事業者や業界団体に加え、職員OBや直接業務に関係のない上司からの要求もあったという。官製談合防止法の趣旨を知らない職員は2割に上り、公務員としての資質に欠けていることも浮き彫りになった。

 逮捕された職員と情報を受けた業者がどのような関係だったかについては、捜査の進展を待たなければならない。ただ、調査委の報告によれば、水道局の体質そのものに欠陥があったことは間違いない。市は、定期的な人事異動や職員教育の徹底を通じ、不正を許さない職場に変革してもらいたい。

 市は本年度から、発注工事に変動型最低制限価格(ランダム係数)を導入するなどの入札制度の改革を行った。しかし、職員の逮捕後に行われた市議会の質疑では、市に対し全容解明やさらなる改革を求める声が上がった。市には、これまでに行われた他の入札にも不正の可能性はなかったのか、徹底した調査を求めたい。

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