書店の経営を支えることは、単に事業者を保護するにとどまらず、地域の文化拠点を守ることにつながる。誰もが本を気軽に入手できる環境づくりに、行政が本腰を入れる必要がある。
政府が、経営が厳しい中小規模の書店の振興策をまとめた「書店活性化プラン」を公表した。街の書店を「地域の重要な文化拠点」と位置付け、振興策を通じて減少を食い止めたい考えだ。
プランをまとめた背景には、活字離れなどにより、書店の減少に歯止めがかかっていないことがある。全国の書店数はここ10年で3割減り、2024年度は約1万400店だった。本県も厳しい状況は同様で、書店ゼロの自治体は、全体のほぼ半数に当たる29、1店舗のみの自治体も11ある。
書店とネット書店、図書館にはそれぞれ特徴があり、どれかがあれば事足りるという性質のものではない。危機的な状況にある地域の書店の活性化が急務だ。
プランでは、本の売れ行きや在庫を効率的に管理できる技術の導入支援、書店の利益が少なくなる要因の一つである、返品の抑制に向けた研究促進を盛り込んだ。本の販売を巡っては、書店より出版社などが優位な商慣行が多く、その見直しを求めた形だ。
地域の書店の減少は本を読む層の裾野の縮小に直結するため、出版社などにとっても望ましいことではないだろう。国は問題点の指摘や対症療法的な施策にとどまらず、本を卸す側と販売する側が共に利益を生み出せる仕組み作りに積極的に関与してもらいたい。
書店が減っている直接的な原因は、本を日常的に読む層が薄くなっていることだ。プランは幼年期からの読書習慣の醸成に向け、絵本専門士などの人材育成や公共の文学館などと書店の連携を進めるとしているが、即効性に欠けるのは否めない。
海外では、若者に限って書店での書籍購入費を助成する取り組みなどがある。政府はこうした海外の事例などを参考に、本を読む層の拡大に向け、もっと大胆な策を打ち出すべきではないか。
書店のない自治体が多い本県では、いかに書店を増やすかも大きな課題だ。人口の少ない自治体では、客層が限られるなど、出店する側のリスクは大きくなる。自治体は、書店の出店を検討する事業者に対し、さまざまな助成制度の活用などを積極的に後押ししてほしい。新しい書店ができた際には、学校図書館用の書籍を購入するなどして、経営の安定に向けた支援も重要となる。