合意形成に向け、与野党ともに一致点を見いだす姿勢が欠けたままでは、国民の政治への信頼回復は遠のくばかりだ。
少数与党の石破茂首相が初めて臨んだ通常国会が、きょう閉会する。石破首相は野党の一部を取り込むことで、2025年度予算や年金制度改革法の成立にこぎ着けた。終盤国会の焦点となった内閣不信任決議案の提出は見送られ、参院選の7月3日公示、20日投開票が確実になった。
150日間にわたる今国会で、結論が先送りされた課題は少なくない。その一つが自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた、企業・団体献金の扱いだ。
企業・団体献金を巡っては昨年秋の臨時国会で法改正ができず、与野党が今年3月末までに結論を得ると合意していたが、それも実現しなかった。最終的に透明性向上を柱とする自民党提出の法案と野党5党派が提出した献金禁止法案はともに採決に至らなかった。
昨年の衆院選で自民、公明両党が少数与党に転落したのは、相次いで発覚した「政治とカネ」の問題が大きい。各党の主張などに隔たりがあるとしても、問題の温床とされている企業・団体献金の扱いに結論を出さないのは理解できない。政治改革への意欲が欠如している証左でもある。与野党ともに猛省すべきだ。
夫婦別姓の問題も決着がつかなかった。立憲民主党と国民民主党はそれぞれ選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正案、日本維新の会は旧姓の通称使用を法的に裏付ける法案を提出したが、採決されなかった。自民は別姓推進派と、旧姓使用の拡大を唱える保守系議員で見解が分かれたままだ。
開かれた国会の場で議論を尽くすのが議員の務めであり、世論を二分するような難しい課題であればなおさらだ。夫婦別姓で、国民に見える形で十分な議論がなされたとは言い難い。
野党提出のガソリン税の暫定税率廃止法案も最終盤に衆院を通過したが、参院で採決されず、成立しなかった。各党にさまざまな思惑があるとはいえ、時間を費やしても何も決められない国会では、国民の負託に応えていない。これでは国民の政治への不信感が増幅するだけだ。国会が閉じられても、合意形成に向け、与野党で議論を続ける必要がある。
物価高やトランプ米政権との関税交渉、緊迫する中東情勢など、困難な課題が山積している。政策を巡り駆け引きに終始するだけでは、国益を守れないことを全ての議員が自覚しなければならない。