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【6月26日付社説】中東の和平/着実な停戦履行を求めたい

2025/06/26 08:10

 イスラエルによるイランへの先制攻撃以降、交戦してきた両国が急転直下で停戦に合意した。カタ

ールが仲介した。しかし合意発表後も散発的に攻撃が続いており、予断を許さない状況だ。

 全面戦争という最悪の事態は回避したものの「薄氷の合意」の印象が拭えない。双方が合意を順守することを強く求めたい。

 イランに核兵器の開発を断念させることを目的としたイスラエルの攻撃に加え、米国も地下の核施設3カ所を空爆した。イランはその報復として米軍が駐留するカタ

ールの基地を標的にミサイルを発射し、その直後にトランプ米大統領が突如、交流サイト(SNS)で停戦合意を発表した。

 イランは主要な軍事施設などが多数破壊され、防空システムも深刻な打撃を受け、継戦能力が大きく低下した。米軍基地への報復攻撃は事前にカタールに通告していた。体面を保ちながら、米軍のさらなる攻撃を回避する狙いがあったとされている。

 イスラエルは、攻撃で核開発計画と弾道ミサイルの脅威を排除し「全ての目的を達成した」と主張している。国際社会からの批判が強く、戦闘の長期化を避けたかった背景もあり、米国が求めた停戦を受け入れたとみられる。

 イランは600人以上が死亡、ガスや石油貯蔵などの施設が甚大な被害を受けた。自衛の場合を除き、武力の使用を禁じる国連憲章に反する行動に踏み切ったイスラエルと米国の責任は極めて重い。

 停戦には合意したが、イランは核兵器開発を放棄していない。中東地域にとどまらず、世界を脅かす核兵器の開発は国際社会の理解を得られない。国際原子力機構(IAEA)の査察を受け入れ、核開発放棄への道を示すべきだ。

 米国の圧倒的な軍事力で相手をねじ伏せるやり方は、決して看過できない。民主主義を掲げ、世界を先導してきた大国がこうした行為を正当化すれば、国際秩序は一気に崩壊する恐れがある。

 トランプ氏は独善的な言動で世界を混乱に陥れるのではなく、大国として国際秩序の安定に尽くしてこそ、米国の利益につながることを自覚すべきだ。

 イランとの交戦を終えてもイスラエルは、パレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を続け、食料不足などの人道危機を招いている。

 イスラエルはイスラム組織ハマスとの停戦協議を再開し、対話によって早期に事態を収拾することが求められる。日本をはじめ、国際社会全体で引き続きイスラエルに停戦を促さなければならない。

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