軽い気持ちで始めてしまえば、自分自身にも家族など周囲の人にも取り返しのつかない悪影響を及ぼす。決して大麻に手を出してはならない。
薬物乱用の害を啓発する「ダメ。ゼッタイ。」普及運動が始まった。運動を主導する厚生労働省が特に力を入れるのが、若者の大麻使用の未然防止だ。
大麻の不法所持による摘発はここ10年で急増しており、直近2年は年間6千件を超えている。その7割を10代、20代が占める。本県では、大規模密売グループが昨年摘発されたほか、今年に入ってからも所持に加え、新たに刑罰が設けられた使用容疑で20歳の逮捕者も出ている。
大麻には脳に作用する成分が含まれ、記憶力や学習能力に悪影響が生じるとされる。何もやる気が起きない状態に陥るなど人格が変化し、社会に適応できなくなることもある。
ほかの違法薬物に比べ価格が安く、入手も容易であることから「ゲートウエードラッグ(入り口の麻薬)」と言われている。大麻からより強い刺激を求めて覚醒剤などの使用にもつながりやすい。この入り口を一度通ってしまうと、依存状態に陥り、引き返すのは容易ではない。最初の一回をいかに防ぐかが重要となる。
警察庁によると、使用のきっかけは、友人などに誘われたことが6割超で最も多い。好奇心に加え、誘いを断って仲間外れにされることを恐れる気持ちから手を染めてしまうとみられる。違法である大麻を勧めてくる人は、もはや友人ではない。誘われてもきっぱりと断る勇気を持ってほしい。
大麻事案の急増の背景にあるのが、交流サイト(SNS)の浸透だ。摘発された人の3分の1が、インターネットで入手先を知ったとしており、その多くが特定の大手SNS経由で情報を得ていた。「大麻に依存性はない」「身体への害は小さい」などの誤った情報に触れたのも、友人・知人からと並んで、ネットが多いという。
摘発が多い若い層は、ネットの情報を信じやすい傾向がある。入手経路や偽情報に触れてしまう前に、大麻が違法で重大な害があり、ネットの情報をうのみにしてはならないことを、家庭や学校で繰り返し伝える必要がある。
誰もが簡単に目にすることができるところに、犯罪につながる情報や麻薬の害を軽視する情報がある状態の解消も不可欠だ。国はSNS事業者などに対し、違法な売買や偽情報について削除などの対応を強く求めていくべきだ。