地域振興という本来の趣旨に沿わない実態は見過ごせない。不断に見直す必要がある。
総務省がふるさと納税の返礼品に関するルールを厳格化する。これまでは返礼品は地場産品が原則で、地元のPRになる場合は、他地域の商品も例外的に認められてきた。来年10月から地元で製造されていない商品は、PRなどで実績のある商品などに限定する。
厳格化の背景には、他地域で製造された飲料などに自治体のロゴを表示しただけの返礼品など、制度の趣旨の一つの、地域産業の活性化が期待できない事例が散見されていることがある。地元企業が企画だけを担い、海外工場に製造を委託した商品を返礼品とする自治体もあるという。
ふるさと納税は人口減少による税収減、地方と大都市の格差の是正などを目的に2008年に導入された。応援したい自治体に寄付すると多彩な地域の特産品を受け取れ、すっかり定着した。県内59市町村が24年度にふるさと納税で受け入れた寄付額は100億円を突破し、過去最高を更新した。
財源が乏しい地方の自治体にとって貴重な制度だ。ただ、地元と関わりの薄い商品を返礼品として寄付を募るのは適切ではないだろう。これまでも豪華な返礼品が問題視され、商品の産地偽装などが相次ぐたびに、ルールの見直しが行われてきた。今回の厳格化も当然の流れだ。各自治体は、制度の趣旨を踏まえた商品を活用することが求められる。
一般販売価格より高額で納品している業者がいるため、地場産品を製造する業者などへの自治体による監視も強化する。一般販売価格の報告のほか、製品価値の過半が地域内で生み出されたことの証明を業者側に求める。
総務省は昨年、寄付を仲介するサイトを運営する業者に自治体が支払う手数料が膨らんでいることを受け、寄付した人に特典ポイントを付与する仲介業者の利用を禁止した。製造や仲介の業者などへの支出が増えれば、その分、自治体の収入が減る仕組みだ。各自治体は業者に適正価格での取引を求め、透明性を高めてほしい。
返礼品効果で寄付総額が増加し獲得競争が過熱するなか、訴求力の高い返礼品がある自治体に寄付が集中する傾向にある。ただ寄付額が多くとも、その財源を有効に活用し、地域振興に役立てられなければ、制度自体の意義が薄れてしまいかねない。
各自治体は、寄付金の使い道やその成果についてもアピールし、寄付の獲得につなげるべきだ。