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【7月1日付社説】更生保護/社会全体で取り組む意識を

2025/07/01 08:10

 犯罪や非行をした人を支える取り組みに理解を深める「社会を明るくする運動」の強調月間が始まった。過ちを犯してしまった人の立ち直りを支えることは、当事者だけではなく、誰にとっても住みやすい地域づくりにつながる―との認識を共有するきっかけにしなければならない。

 犯罪白書によると、何らかの罪で服役した人の4割超が10年以内に再び刑務所に戻り、刑務所に入る人の半数以上を元受刑者が占めている。一度、刑務所に入った人が、社会のなかで再生を図るのがいかに容易ではないかを示すデータだろう。刑務所や少年院で再犯防止に向けた取り組みを強めることが不可欠だ。

 再犯率、刑務所への再入率が高止まりしているのを受け、国は法改正で、刑罰の懲役と禁錮を一本化して、新たに「拘禁刑」を設けた。受刑者の特性や再犯リスクに応じて、コミュニケーション能力の向上や薬物依存からの脱却を図る指導、職業訓練などを強化する。6月に起こした事件、事故により実刑判決を受けて収監された受刑者から適用される。

 再犯率などの高さは、社会復帰を受け入れる側の不安や警戒感に直結する。刑務所を出た人などの最初の課題である住居や仕事の確保への影響が懸念され、再犯の悪循環を生みかねない。法務省、刑務所には矯正指導の実施内容と再犯率の関連を精査し、指導の充実を図っていくことが求められる。

 刑務所を仮釈放となった人や保護観察付きの有罪判決を受けた人などの社会復帰を支援する民間ボランティアの保護司は、重要な存在だ。ただ、保護司の多くは65歳以上の高齢者で、今後の減少が避けられず、なり手の確保が急務となっている。

 保護司が担当していた保護観察の対象者に殺害される事件が昨年発生したことで、自宅での面会など活動に伴う危険性に改めて焦点が当たった。法務省はその後、保護司の確保に関する有識者検討会のまとめを受ける形で、面接に保護観察官らがオンラインなどで同席して保護司をサポートすることや、自宅以外の面接場所の確保などを盛り込んだ法改正を行う方針を示した。

 保護司の数と安全が十分に確保できなければ、社会のなかで更生を促す取り組みそのものが揺らいでしまう。再起を目指す人を社会全体で温かく見守ることの重要性や、保護司の担う役割の尊さを知り、自分自身にも何かできることがないかを一人一人が考えるようにしたい。

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