第27回参院選があす、公示される。各党と候補者の政策や主張を吟味し、1票を投じる先を判断することが重要だ。
共同通信社が、世論調査で全国の有権者を対象に何を最も重視して投票するかを聞いたところ、「物価高対策」が約3割で最も多かった。「年金など社会保障」や「子育て・少子化」、「景気・雇用」と続き、生活に密着したテーマに関心が高いことが分かる。
各党は物価高について、給付や減税などの政策を掲げる。現在の物価高は、国際情勢の不安定化に伴う食品や資材の高騰、人口減少によるサービスのコスト増などの要因が複雑に絡み合っている。有権者は、短期的な消費支援だけで判断せず、各党の政策に社会経済を中長期的に改善する視点があるかどうかを見定める必要がある。
社会保障や子育て、少子化問題などの分野では、公約に加え、各党がそれぞれの課題について国会でどのような対応をしてきたかを注目したい。公約に掲げてはいても、これまでの国会で政策実現に向けた法案を提出していなかったり、採決に後ろ向きであったりした場合には、かけ声倒れとなる可能性がある。投票先を選ぶ一つの判断材料になるだろう。
改選数1の福島選挙区は、自民党現職の森雅子氏、立憲民主党新人の石原洋三郎氏、参政党新人の大山里幸子(りさこ)氏、政治団体「NHK党」新人の越智寛之氏が立候補を予定する。比例代表は本県関係で自民党現職、日本維新の会現職、共産党新人の3人が出馬予定だ。
本県には東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの地域再生という課題がある。帰還困難区域の避難指示解除などを実現するためには、自治体や民間の取り組みを支援する政治の力が欠かせない。選挙区や比例の投票先を考える場合には、候補者や各党が本県復興についてどのような見識を持っているかを十分に考慮したい。
3年に1度行われる参院選は政権の「中間テスト」などと呼ばれるが、衆参のねじれを生むなど、政治の局面を変えるきっかけになることもあった。今回は、衆院で与党が少数の状況にあり、結果次第で国政の枠組みが変わる「政権選択選挙」の色合いも出ている。
近年の選挙では、交流サイト(SNS)などを通じた情報収集で投票先を決める動きがある。ただ、ネット上の情報には、真偽不明の情報も含まれているのが実情だ。目にした情報をうのみにせず、新聞報道や公的機関の発表で確認するなどして、内容が正しいかどうかを精査してもらいたい。