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【7月6日付社説】参院選・震災と原発事故/復興への姿勢を見極めたい

2025/07/06 08:00

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興は、政権がどのような枠組みになっても完遂しなければならない課題だ。政権の一翼を担うことを目指す政党ならば、地域再生に向けた政策を論じる責務があることを肝に銘じなければならない。

 震災と原発事故で大きな被害を受けた浜通りには、住民が帰ることができない「帰還困難区域」が残る。原発の廃炉については、肝心の溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しがまだ試験段階にとどまっている。県民や被災地の実情を知る人にとって、復興は道半ばであり、風化させずに取り組む必要があることは共通認識だろう。

 参院選に候補者を擁立した主要政党の公約をみると、震災復興に関する温度差がはっきりしている。復興に向けた責任や対策を記した政党、原発事故の被災地としての本県に注目し賠償や健康管理の充実を訴える政党、言及がほとんどない政党だ。有権者は公約を読むとともに候補者の演説を聞くなどして、各党の復興に対する姿勢を見極めることが重要だ。

 中間貯蔵施設に保管されている除染で出た土壌については、政府が将来的な県外での最終処分に向けた基本方針を決定した。除染土壌は約1400万立方メートルあり、最終処分の量を減らすには、各地で除染土壌を再生利用しなければならない。政府は再生利用に向けて、「国民の幅広い理解情勢」を進めることにしている。

 除染土壌の再生利用や最終処分について、公約で言及したのは自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党にとどまる。政府が国民に理解を求めて進めようとする取り組みに対し、政党はそれぞれの意見を表明するのが当然だ。各党には、幹部や候補者の遊説を通じて、除染土壌の扱いについての対応を明確にしてもらいたい。

 浜通りや阿武隈山系の被災自治体では、住民避難などで高齢化や人口減少が急速に進んだ。公共施設の統合なども行われ、全国の地方が将来直面するであろう課題について、先取りして解決策を探っているのが現状だ。

 復興の方向性について、自民は「新しい価値を創造する地」、立憲民主は「先例にとらわれない発想」、国民民主は「あらゆる政策手段を投入」、公明は「個人の尊厳が尊重された人間の復興」と表現する。被災地に対する向き合い方は、各党が全国の課題を抱えた地域にどのように対応するかを見通す指標となる。中通りや会津地方の有権者も、復興政策からにじみ出る政党色を吟味してほしい。

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