人口減少が進む中、地方の公共サービスや社会活動をどのように維持していくかが問われている。しかし、地方政策は他のテーマに埋没している感が否めない。政党は票田の大都市ばかりに目が向いて、地方への対応を軽視していないか。選挙戦が中盤に差しかかる中、各党には地方政策を巡る充実した論戦を求めたい。
都市圏と地方の関係を巡っては、UIJターンや移住、定住の促進を進めることが人口偏在の是正策として訴えられてきた。近年は、都市部に住みながら地方の地域おこしなどに継続的に関わる「関係人口」や「交流人口」を増やす必要性も指摘されている。
これまでの取り組みは一定の効果があったと判断できるものの、都市圏への人口集中は止まっていない。主要政党は、地方政策の主軸に各地の取り組みを後押しするための権限委譲や財政支援などを据えるが、目新しいものは見当たらない。各党は遊説を通じ、都市から地方への人の流れを促し、各地の持続可能性を高めていくような対策を訴えてもらいたい。
地方振興についての公約を比較すると、ほぼ全ての政党が地域交通の維持・確保を主張している。鉄道網などが発達した大都市圏と異なり、地方の移動では車の利用が不可欠だ。住民が高齢化した地域では、路線バスなどの運行が休止してしまうと、通院や日常の買い物に困る「交通空白」の地域となってしまう。
各党ともに維持・確保に向けた支援の必要性を訴えるが、公約での書きぶりや分量はそれぞれ異なる。コストがかかる地域の交通網を誰が担うのか、自治体の取り組みを国はどのように支えるのか。切実な問題である地域交通への向き合い方を通じて、各党の地方政策の本気度や具体性を探ってみるのも一案だろう。
地方の人口減少を見越し、行政や地域社会におけるデジタル技術の導入推進を訴える政党は多い。党によっては、物流を支えるためのドローンやロボットの活用、オンラインによる遠隔診療を行う仕組みの導入などを政策に盛り込んでいる。
デジタル技術の導入は、行政などの仕事の省力化を図る上で有効だ。ただ、地域社会では住民一人一人と向き合うアナログ的な対応も必要で、効率化の視点だけで将来を描くことは危うい。民間の力を活用し、公共サービスの一翼を担ってもらう道もあるはずだ。各党には、地方に住む国民の生活をどのように守るのかという根本的な視点も提示してほしい。