どの世代も将来に希望を持てる仕組みの構築が政治に課せられた使命だ。財源論などにも正面から向き合い、議論を深めてほしい。
少子高齢化に歯止めがかからないなか、各党は年金制度や医療制度の改革、少子化対策、子育て支援策などを公約に盛り込んでいる。ただ、各党の政策は従来からの方針を踏襲した内容が多く、有権者が高い関心を寄せている物価高対策に比べ、論戦は低調だ。
先の通常国会で、自民、公明、立憲民主の各党が年金制度改革法を成立させた。短時間労働者が厚生年金に入る年収要件を撤廃し、労働時間が週20時間以上なら、年収を問わず加入することになる。
自民、公明は年金改革による厚生年金の加入拡大をアピールするとともに、改革法の付則に明記された基礎年金の将来的な底上げについて公約に盛り込んだ。立民は低所得者の高齢者の年金についても一定額の上乗せを掲げる。
改革法に反対した国民民主党は最低保障機能の強化や新たな制度導入を主張している。共産党、れいわ新選組は「マクロ経済スライド」など、年金を実質的に減額させる制度の廃止を訴える。
与野党ともに給付水準の改善を唱えているものの、年金制度は複雑で、世代や働き方などで考え方や受け止めが異なる。今回の改革では厚生年金の積立金の一部を活用し、基礎年金を底上げする案が見送られた。各党はこうした制度設計などにも踏み込み、解決策を論じる必要がある。
年金改革で将来受け取る年金が手厚くなる一方、配偶者の扶養から外れることで社会保険料の負担が増えるケースが想定される。立民は給付による穴埋め、参政党は予防医療への転換を図り、保険料の負担を軽減するとしている。
日本維新の会は医療費を年間4兆円以上削減し、保険料を現役世代1人当たり6万円引き下げることを公約に掲げる。維新や国民は後期高齢者の医療費の自己負担の引き上げを盛り込んだ。
人口の多い「団塊の世代」が75歳に達し、その子の世代も間もなく高齢者となる。医療や介護のニ
ーズ拡大が避けられない中、サービスの質を維持しながら費用をどう圧縮させるかも切実な課題だ。各党に積極的な議論を求めたい。
社会保障制度の安定財源とされる消費税について、多くの野党が減税策を掲げている。減収分は税収の上振れ分や基金からの捻出を見込んでいるが、持続可能な財源確保策とはいえまい。有権者は将来世代に責任のある政策は何かを見極めなければならない。