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【7月11日付社説】トランプ関税/見直し促す動きを主導せよ

2025/07/11 08:06

 トランプ米大統領が自身の交流サイト(SNS)で石破茂首相に宛てた書簡を公開した。書簡は、米国が輸入する全ての日本製品について、8月から「相互関税」25%を課すとしている。4月発表当初の24%から1%引き上げた。トランプ氏は今月9日までとしていた相互関税上乗せ分の停止期限を延長する大統領令に署名した。

 トランプ氏はEUやアジア諸国などにも、新たな国別の税率を示したほか、ブラジルについては前大統領の起訴を理由に、50%を課すとした。また、電線などに使われる銅の品目別の関税を50%に引き上げる方針を示した。

 一方的に要求を伝えることで、相手国に対応を強いる手法は、極めて傲慢(ごうまん)と言うほかない。

 書簡には、思うように交渉が進まぬことへのトランプ氏のいら立ちが透けて見える。日本に対して米国が主に求めているのは非関税障壁の解消であり、今回の1%引き上げに根拠は見いだせない。引き上げは、自動車への関税見直しにこだわる日本への不満を示したとみられている。

 石破首相は書簡について「誠に遺憾だ」と述べた。「日本側の対応次第では内容を見直し得るとして、協議を速やかに進めていきたいとの提案を受けている」という。米国の求めが根拠や正当性を欠くものとはいえ、それが実行されれば輸出産業が受ける打撃は大きく、賃上げなどの動きを逆戻りさせかねない。

 自動車は日本の基幹産業であり、米国の示した期限に沿って合意を急ぐべきではない。高関税が米国の経済にもたらす影響や、中国の経済的、軍事的脅威が増す中で日米の同盟関係を揺るがすのは得策でないことを訴えていくことが大切だ。

 来週末に予定されるベッセント財務長官の来日などのタイミングを生かして、粘り強く見直しを求めていく必要がある。

 赤沢亮正経済再生担当相が繰り返し訪米して協議に臨みながら、当初より国別の関税が引き上げられたことから、国内では政府の交渉力を疑問視する声がある。情報がなければ国民や市場は混乱する。交渉内容をつまびらかにするのは難しくとも、政府は状況を一定程度発信すべきだ。

 同盟国である日本が米国の独善的な手法の修正をしっかりと求めていかなければ、世界経済のさらなる停滞につながりかねない。日本と同様に米国輸出への経済依存度が高い韓国などと連携しながら、関税見直しをどう促すか。日本政府の手腕が問われる。

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