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【7月13日付社説】参院選・SNS/複数の情報から見極めたい

2025/07/13 08:05

 真偽不明な情報、誹謗(ひぼう)中傷などを目的とした投稿が散見されている。有権者はこうした民意をゆがめる恐れのある行為に惑わされることなく、多角的に情報を見定め、判断することが求められる。

 2013年のインターネット選挙の解禁以降、国、地方を問わず、選挙において交流サイト(SNS)や動画サイトの存在感が増している。各政党や候補者は公約などの情報を発信し、有権者は時間や場所を選ばず情報を入手できる。多くの選挙管理委員会が投票呼びかけで活用するなど、政治への関心を高めるツールとして重要な役割を果たしている。

 参院選の公示前に共同通信が行った世論調査では、投票先を決める際にSNSや動画サイトなどから得る情報を「重視する」と回答した人は37.8%に上った。

 しかし近年の選挙ではその危うさも指摘されている。今回の参院選では一部の政党が外国人の規制強化を公約に掲げる中、SNSに「医療や年金で優遇されている」「外国人の犯罪が増えている」などの誤った内容の投稿が相次ぎ、人権団体が外国人を敵視する動きに反対する緊急声明を出した。

 総務省は先月、投稿される偽・誤情報に関し、削除の適否を迅速に判断するよう大手のSNS運営事業者に要請した。虚偽や差別的な情報に基づき民意が形成され、政治に反映されるのは看過できない。事業者は表現の自由に配慮した上で、虚偽や差別的な投稿などに積極的に対応してもらいたい。

 政党や候補者が発信している動画などにも挑発的な言動や、対立候補などをおとしめるような内容が少なくない。有権者を刺激するのではなく、冷静な判断に資する情報を発信すべきだ。

 第三者が再生数を増やして収益を得るため、候補者の演説などの映像を切り抜き、配信しているケ

ースもある。選挙の公正さを損なうような行為は慎む必要がある。

 有権者も留意しなければならない。SNSには利用者の興味のある情報ばかり表示されたり、自分と似た意見や価値観を持つ人とのやりとりに偏ったりする傾向がある。膨大な情報の中から、共感の持てる情報に触れやすい仕組みは便利である一方、多様な意見や価値観に触れる機会を自ら閉ざしてしまう恐れもある。

 一つの情報源だけに頼るのは危険な行為だ。ネットなどで政党や候補者が直接発信している情報を確認し、選挙公報や新聞、テレビなどの複数の媒体を活用するなど情報の真偽を自ら確認することを意識してほしい。

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