身近な自然環境の価値を再認識し、後世にしっかり受け継ぐための取り組みを強化していきたい。
水鳥の生息地として国際的に重要な湿地を保全するための「ラムサール条約」に、国内有数のコハクチョウの越冬地である猪苗代湖が登録された。登録は国内54カ所目で、県内では2005年11月登録の尾瀬に続き2カ所目となる。
イランのラムサールで1971年に開催された国際会議で採択された条約は、湿地の保全・再生、賢明な利用、交流・学習の推進の3点を図ることが目的だ。これまで世界中の湿原や湖沼、河川など2538カ所が登録されている。
猪苗代湖については、日本野鳥の会の郡山、会津両支部から2年前に要望を受け、県と郡山、会津若松、猪苗代の立地3市町が登録に向けた取り組みを進めてきた。
湖には多くの野鳥が生息し、特にコハクチョウは年平均で800羽ほど飛来するなど、本県の豊かで美しい自然を象徴する存在だ。条約登録は県民の誇りであり、野鳥の会や自然保護団体が長年にわたり保全活動に取り組んだ成果といえる。本県の宝である湖を守るため、尽力してきた多くの人に敬意を表したい。
今後、条約の趣旨に沿った保全や利用などを推進していくことが求められる。これまでも住民らが湖岸の清掃、水質改善のための水草の除去活動に汗を流してきた。特に地元の小中学生らは良質な水や生態系を守るために何ができるかを考え、水質調査や水草回収などに継続的に取り組んでいる。
郡山市は活動の検証や成果を発表する場を新たに設ける方針だ。県や立地3市町は、美しい湖を持続可能なものにしていくため、地元の子ども以外の人が生態系について学び、保全などの活動に携わる機会を増やしてもらいたい。
国内4番目の広さを誇る猪苗代湖は本県の貴重な観光資源で、湖水浴やキャンプ、ボートなどのほか、音楽やサイクリングのイベントが企画され、県外からの観光客も多い。水は郡山市周辺に供給されて本県の発展の礎となった。
国内の他の登録地に比べ、すでに観光や教育などで活用されているものの、条約登録で猪苗代湖の認知度がさらに高まることが期待される。県などが中心となり、民間企業や団体と連携を図り、その歴史や魅力を国内外へ発信し、多様な生態系や人々の生活に果たしてきた役割などを伝え、猪苗代湖の価値を高めてほしい。
一方、過度な利用で生態系に影響を及ぼさないよう、指導や監視を徹底することも大切だ。