県の調査で、県内の事業所に勤務する男性が育児休業(育休)を取得した割合が昨年、初めて4割を超えた。男性の育休取得は、男性が子育てに関わる機会をつくるだけにとどまらず、女性の育児負担の軽減や出産後に仕事を続けることができる環境づくりが進む効果もある。行政と企業が連携し、仕事と子育てを両立できる取り組みを進めることが求められる。
育休取得の状況把握は、労働条件等実態調査の一環として、県内で常時30人を雇用する1400の事業所を抽出して行っている。男性の取得率は、2021年は1割強、22年は約2割、23年は3割強となっており、4年連続で増加している。県は、全体的に男性の育休取得に対する企業の理解が進んできた表れとみている。
国は4月から、従業員1001人以上の企業に義務付けていた男性の育休取得率などの公表を301人以上の企業に拡大した。公開される取得率は、働く人が就職、転職先を考える一つの指標になるはずだ。県は、育休を取得できる環境の整備が人材確保につながることを企業に積極的に周知し、さらなる取得率の向上に結び付けてもらいたい。
昨年の取得率を事業所の規模別で見ると、500人以上の企業の取得率は5割弱に上る。その半面、100人から299人の事業所はかろうじて約4割で、30人から99人、300人から499人の事業所は、3割台にとどまっているのが現状だ。
県はこれまで、育休の取得日数に応じた奨励金を交付して利用を促してきた。本年度は新たに、初めて男性が育休を取得した企業に20万円の奨励金を出す。県は取得率が低い業種の団体などと連携し、支援制度の啓発や現場の課題を聞き取り、解決するためのセミナーなどを行い、小規模事業所の取り組みを後押ししてほしい。
男性の育休取得率は事業所の規模ごとに異なっているが、女性をみると取得率はいずれも9割強となっている。育休の平均取得日数をみても、女性は約300日であるのに対し、男性は約40日にとどまっている。
男女差の背景には、男性が給与の減少やその後のキャリア形成に影響することを懸念し、取得に二の足を踏む傾向があるとみられている。国は不安解消の一助として、育休中でも最長28日間、手取りが減らない対策を講じた。国と県は、育休の取得が不利にならないような枠組みを整えながら、企業経営者や男性従業員の意識改革を進めていくことが重要だ。