政党は、議会制民主主義で国民の意思を政治に反映させる重要な役割を担う。与党が衆参両院で過半数に満たず、多党化が進んだことで、政治の意思決定が停滞するような状況は望ましくない。多様な意見を尊重して丁寧に議論し、各党が合意形成を図るべきだ。
今回の参院選は、与党の自民、公明両党が大幅に議席を減らし、野党第1党の立憲民主党も政権批判票の受け皿とならず、日本維新の会も伸び悩んだ。共産党は改選7から3に減らした。
一方、国民民主党は改選4から17に、保守系の参政党は改選1から14に急伸した。比例代表で国民民主は野党最多の762万票を獲得、参政も立憲民主の得票数を上回った。れいわ新選組、日本保守党も議席を増やした。151万票を集めた政治団体の「チームみらい」は総得票数の割合が2%を超え、政党要件を満たした。
政権与党や既成政党への不満、不信を、新興勢力がすくい上げた結果だろう。これまで国政を担ってきた政党は、支持団体などとの関係は良好でも、無党派層や若年層などとの間に隔たりがあり、民意を十分に把握できていないとの指摘もある。既成政党は、有権者の信頼が揺らいでいる現実を重く受け止め、内向きな姿勢を改めていく必要がある。
参政は昨年の衆院選でも3議席を獲得した。自民1強の時代が終わり、新興勢力の台頭による多党化の流れは、過熱するインターネット選挙とも深く関わっている。
従来の選挙は、政党を支持する団体や労働組合などが組織力を発揮し、集票に貢献していた。しかし近年は交流サイト(SNS)を駆使した活動が浸透し、政党や候補者の情報発信の自由度が高まり組織に頼らない活動も目立つ。
ただネット選挙の危うさは今回の参院選でも指摘された。「日本人ファースト」を前面に打ち出した参政の神谷宗幣代表は、外国人差別や女性蔑視とも受け取れるような発言を繰り返し、その動画などが拡散されて物議を醸した。
トランプ米大統領に象徴されるSNS上の過激な言動や主張で耳目を集めるのは選挙戦術の一つとはいえ、虚偽や中傷、差別的な言動は看過できない。政党に責任ある言動が求められるのは当然ながら、有権者が冷静に政党や候補者の主張や言動をしっかり見極め、判断することも大切になる。
多党化に伴い、さまざまな視点で政策を考え、政治に反映させれば社会の多様性につながる。政策を一方的に主張するのではなく、対話の姿勢を重視してほしい。