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【7月29日付社説】警察官かたる詐欺/現金の要求うのみにするな

2025/07/29 08:10

 詐欺グループにこれ以上、甘い汁を吸わせてはならない。自衛策を徹底することが大切だ。

 県内で1~6月に確認された「なりすまし詐欺」の被害は前年同期比36件増の89件で、被害額は同5億5152万円増の6億3857万円に上る。いわき市の女性が約1億円をだまし取られるなど、高額の被害も複数あり、昨年1年間の被害額を超えている。

 一度、うその電話を信じてしまうと繰り返し現金を要求されるなどして被害が高額となり、発覚も遅れてしまうことがある。被害に遭わないためには、突然電話してきた相手の話をうのみにしないことに尽きる。

 詐欺に関する電話は、入手しやすい国際電話番号の悪用が目立っている。「+1」や「+44」など、「+」で始まる着信は要注意だ。固定電話の場合は、簡単な手続きで国際電話の利用を休止できる。電話会社に相談してほしい。

 県警によると、なりすまし詐欺は、そのときどきにより、増える手口がある。かつては息子をかたって現金をだまし取る手口が多かったが、現在注意が必要なのは警察官をかたるものだ。犯罪被害の恐れや、犯罪に関与している疑いがあるなどとして、捜査や身の潔白を証明するのに必要として現金を求められ、応じてしまうケースが全被害の半数近くを占める。

 被害者の7割弱は高齢者だ。誰もが信頼する職業をかたって、長年働いて築いてきた資産をむしり取るような犯罪は卑劣だ。

 警察から連絡があったとすれば、誰しも不安になるだろう。交流サイトに誘導して、逮捕状の画像を見せることもあるという。しかし、警察が電話で逮捕をほのめかしたり、現金の振り込みなどを求めたりすることは絶対にない。電話を受けてしまった場合は、所属する部署や氏名などを確認して、最寄りの警察署に連絡するのが最も適切な対応だ。

 電話機に表示された番号は、警察の番号ではない恐れがあるので、そのまま折り返すのは危険だ。自分で警察署の番号を確認するか、警察相談専用電話(#9110)にかけてほしい。

 詐欺グループはその一員ですら首謀者が分かりにくくなっている。海外から指示を出しているケースが多いこともあり、摘発が進んでいないのが現状だ。摘発される恐れが小さければ、犯罪者は増長するばかりだろう。警察などには積極的な注意啓発と並行して、一つでも多くの詐欺グループを摘発し、犯行をためらわせる状況をつくることが求められる。

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