政権を支える党内が一致団結できない状況では、どの政策も前に進めることができまい。この現実を直視し、自ら身を処すべきだ。
参院選の大敗を受け、石破茂首相の退陣論が党内外で拡大する中、自民党の両院議員懇談会が開かれた。党総裁の石破首相は選挙結果について「心からおわび申し上げる」と陳謝したものの、関税交渉合意やコメ政策、社会保障と税の一体改革を例示し「決して政治空白を生むことがないように責任を果たしたい」と述べ、改めて続投に強い意欲を示した。
出席した一部の議員から続投を支持する意見もあったが、即時退陣や総裁選の前倒しを求める声が大勢を占めたという。
首相が関税交渉などの喫緊の課題や外交日程を踏まえ、「政治空白」を懸念するのは理解できる。しかし農業政策や社会保障制度の改革などは、党内や国会での議論を尽くさなければ実現できない。身内から退陣を求められているような政権では到底無理だ。
首相は参院の過半数維持を「必達目標」に掲げて選挙に臨み、それを実現できなかった。昨年秋の衆院選に続き、国民から再び不信任を突き付けられた。こうした結果は、派閥裏金事件に象徴される「政治とカネ」の問題などへの国民の不信が大きな要因だ。
旧態依然の党の金権体質こそ問題であり、首相に全ての責任を押し付けるのは筋違いだとの指摘がある。しかし首相は総裁として党改革を実行できる立場だ。それにもかかわらず、首相は野党側が裏金事件の再調査や真相解明を求めても「可能な限りの調査を行い、結果を説明してきた」と拒否した。企業・団体献金の禁止については党内の反対意見に配慮し、結論を出してこなかった。
党改革で指導力を発揮せず、国民の不信を払拭できなかった首相の責任は大きい。
そもそも国民に信を問うた選挙で敗北したにもかかわらず、首相の立場にとどまるのは民意の軽視であり、選挙自体を否定するものだ。首相が強調した「国家、国民に責任を持つ」資格はない。
党は正式な議決機関である両院議員総会の開催を決めた。党内に総裁選の前倒しを求める決議を提出する動きがある。党務を仕切る森山裕幹事長は、参院選総括後の引責辞任に含みを持たせている。
参院選では自民などの既成政党への国民の不信が浮き彫りになった。内輪もめが長引けば、不信はさらに増幅するだろう。総裁や幹事長を代えただけで、信頼を取り戻せると考えてはならない。