海岸や川から離れ、高台などの安全な場所に直ちに避難するという、東日本大震災の教訓を生かすことができたかを検証し、有事への備えをより強固にしたい。
ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とした巨大地震による津波が、本県を含む太平洋沿岸に押し寄せた。県内では相馬市の相馬港で70センチ、いわき市の小名浜港で60センチの津波が観測された。
気象庁が太平洋側を中心に津波警報を発令したことを受け、県内では沿岸の7市町の計24万6千人に避難指示が出された。多くの人が近くの高台や避難所などに駆け付けたとみられる。しかし、道路の渋滞が発生しなかったか、高齢者や障害者などの要支援者がスム
ーズに避難できたかなど、今後確認しなければならない点は多い。
今回は津波の到達予想時刻まで余裕があったものの、地震発生から数分間で津波が襲来するケースもある。津波警報や自治体からの避難指示を把握し、迅速かつ安全に行動に移すことが命を守る。土地勘のない観光客や海水浴などで訪れている人の誘導を含め、県や各市町は、適切な情報発信や避難ができたかを検証してほしい。
住民も安全な場所までの移動手段や経路などについて改めて確認し、家族や職場の同僚らと共有しておくことが大切だ。
今回の避難で浮き彫りになったのが暑さ対策だ。建物や樹木がない高台や建物の屋上などに避難した人は、炎天下の厳しい環境に苦しめられた。県外では避難中に熱中症で搬送された人もいる。
県によると、県内では約1600人が避難所に身を寄せた。学校を避難所にしている自治体では、空調設備のない体育館ではなく、冷房の効いた教室が開放された。
津波は何度も押し寄せ、第1波より高くなる場合があり、長時間の避難を余儀なくされる恐れもある。暑さ対策に限らず厳冬期も想定し、切迫した状況で安全を確保する高台などの「指定緊急避難場所」から、一定期間滞在する「指定避難所」への移動経路の確認、指定避難所の空調設備の整備などを早急に進めてもらいたい。
政府の地震調査委員会は1月、東日本大震災と同じ日本海溝での地震について、宮城沖(沖寄り)の30年以内の発生確率を「80~90%」に引き上げた。南海トラフ巨大地震なども想定されている。
災害の備えで最も避けなければならないのは警戒心の薄れだ。14年前の震災を経験していない世代も増えている。いつ起きてもおかしくない地震や津波への意識を高める契機にしなければならない。