東北や北海道を中心に、市街地や住宅地でクマの出没が相次いでいる。福島市ではJR福島駅近くの荒川沿いで複数回目撃されている。同川沿いの古民家を保管する施設では1日、男性がクマに襲われ、足にけがをする事故もあった。7月には、北海道福島町や岩手県北上市の住宅地で、それぞれ1人がクマに襲われ死亡した。
福島市は4~6月の目撃情報の3割を住宅地が占めている。クマの本来の生息域である山林などから離れていてもクマに遭遇する恐れがある。被害を避けるためには、クマの行動の特徴を知り、対策を徹底することで、遭遇の恐れを下げていく必要がある。
福島市の担当者は、市街地などへのクマの出没の背景には、クマの餌となる木の実が昨年豊作だったことがあると分析する。餌に恵まれたことで数が増え、縄張り争いに敗れるなどしたクマが餌を求め、河川を伝って移動してきていると考えられるという。
北海道や岩手県の事故では、ごみ箱をあさった痕跡が複数確認されたり、倉庫にあった食料が荒らされる被害があったりした。クマは、餌のあるところに近づいてくる。家庭ごみを収集に出す場合には、前日夜に出さず、当日に出すようにするなどして、クマに餌がある場所と認識させないことが重要となる。
クマが活発に活動する時間帯は、早朝や夕方だ。周辺で目撃情報がある場合には、この時間の散歩などはできる限り避けてもらいたい。山林から離れた場所であっても、鈴やラジオなど音の出る物を携行することも考えたい。
万が一、クマに遭遇してしまったら、大声を出したり走って逃げたりして刺激するのは禁物だ。クマから目を離さず、後ずさりしながらその場を立ち去るようにすることが大切だ。
福島市の場合は吾妻山周辺を源流とする複数の河川が阿武隈川に流れ込んでおり、クマが市街地に近づきやすい環境がある。福島市はわなを設置しているほか、クマが嫌がる音を発生する装置を設置することにしている。同市に限らず、河川を管理する県などと市町村が連携して樹木を伐採し見通しを良くするなどして、住民が多い場所へのクマの移動を抑えることが求められる。
法改正により、クマやイノシシが住宅地などに侵入し、人命のために緊急の対応が必要といった一定条件を満たせば、市町村の判断でハンターによる発砲が9月から可能となる。市町村は発砲の必要が生じた時にスムーズな対応ができるよう準備を進めてほしい。