民生委員が、12月1日付で一斉改選を迎える。住民の困り事などを聞き取り行政につなぐなど、地区の福祉を住民目線で支える役割を果たしているが、全国的に担い手が不足している。県や市町村は、住民の孤立防止などで十分な活動ができるよう、委員の確保を進めていくことが必要だ。
民生委員は特別職の地方公務員で、児童委員も兼ねている。任期は3年で、市町村ごとに定数がある。県によると中核市を除く市町村の委員は計2889人で、定数に対する充足率は約98%だ。中核市の充足率は郡山市が約98%、いわき市が約93%、福島市が約97%となっている。
定数は人口や地区の事情を踏まえ、住民に対するサービスが適切に行われるよう設定されている。わずかな欠員であっても、委員の空白区が生じたり、それをカバーするため委員1人当たりの負担が増えたりすることが懸念される。市町村には、自治会などの協力を得て、1人でも多くの委嘱につなげてもらいたい。
厚生労働省の社会福祉推進事業の調査で、民生委員を対象に担い手の確保が難しい理由について聞いたところ「地域が高齢化している」「高齢者の就労率が高くなっている」と、高齢化の影響を指摘する声が多かった。それと同様に課題として指摘されたのが、「民生委員の制度や活動内容が知られておらず、住民の理解を得にくい」という理由だった。
別の調査によれば、40歳以下の世代で「民生委員という名称を聞いたことがない」という人の割合は約4割に上る。県と市町村は、民生委員が「身近な相談役」として活動している実態を周知しながら、働き盛りで地域活動に熱心な住民らに委員となってもらうことにも力を入れてほしい。
いわき市では、民生委員が複雑なケースに直面した時に、解決に向けて相談を受け付ける体制を整えている。郡山市などでは、業務量が多い地区などを対象に、委員の仕事の一部を担う「民生委員協力員」を配置している。
人手不足の中で担い手を確保するためには、引き受けてもらう上でのハードルを下げていくことが欠かせない。市町村には、先進地の事例を参考に、委員の負担を軽減する取り組みの積極的な導入を求めたい。
高齢者や単身の世帯が増えており、民生委員の役割はより重要になることが予想される。国は制度を持続可能なものにするため、待遇改善や定数基準の見直しなどを進めていかなければならない。