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【8月8日付社説】マダニ感染症/屋外活動での予防策徹底を

2025/08/08 08:40

 マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の患者が、過去最多を上回るペースで増えている。東日本での感染報告が相次いでおり、屋外でマダニに刺されないような対策を確認しておきたい。

 SFTSは、人間や動物がマダニに刺されるなどして感染する。6~14日間の潜伏期間の後、発熱や嘔吐(おうと)、下痢、意識障害などの症状が現れ、致死率は10~30%とされる。2011年に中国で初めて報告され、国内では13年に初めて確認された。近年は年間100人超の報告があるが、今年はすでに速報値で120人に達している。

 注目しなければならないのは、感染地域が拡大していることだ。これまでは西日本での確認が多く、東日本での感染事例はほとんどなかった。しかし、7月に神奈川県、今月に入り北海道と茨城県でも感染が確認された。茨城県の事例では、70代男性が自宅近くの畑や山で草刈りした際に感染したとみられる。同県では、イヌやネコの感染も報告されている。

 本県での感染の事例はまだないが、厚生労働省は「ウイルスを持ったマダニがいるかもしれないと注意することが必要」と指摘する。マダニは、家にいるダニとは異なり、比較的大型で主に屋外の森林や草地に生息し、秋までが活動期だ。夏休みで県外にレジャーなどで出かける場合に加え、日頃から肌を露出した状態でむやみにマダニがいるような場所に入らないことが重要だ。

 マダニに刺されないためには、草むらなどに入る際は長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、シャツの裾はズボンの中、ズボンの裾は靴下の中に入れることが薦められる。帽子や手袋、首にタオルを巻くなどして、肌の露出を抑える工夫も必要だ。マダニの付着が分かるよう、明るい色の服を着ることも有効とされる。

 本県は、ダニの一種であるツツガムシに刺されることによる感染症「つつが虫病」の多発地域である。マダニへの備えは、ツツガムシへの対策とほぼ同じであり、普段から心がけている人も多いだろう。上着や作業着は家の中に持ち込まない、屋外活動後はシャワーや入浴でダニがついていないかチェックすることと合わせ、対策を徹底していきたい。

 マダニに刺された際、無理に引き抜くと病原体が体内に入りやすくなることがある。なるべく医療機関で処置してもらうとともに、数週間は体調を確認し、発熱などがあった場合にはすぐ診察を受けることも忘れないでおきたい。

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