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転倒や道迷い、熱中症...夏山の「まさか」想定して 遭難、昨年の2倍ペース

2025/08/08 08:20

安全登山講習会でストックを使いながら慎重に登山道を進む参加者=7月、福島市・浄土平

 県内で山岳遭難が多発している。登山者が道に迷ったり、滑落したりして救助される事故が相次ぎ、今年の遭難発生件数は昨年の2倍程度で推移する。夏山シーズンまっただ中で関係者は「まさかの事態を想定し、装備や山に関する知識など、準備をしっかりしてから山に登ってほしい」と注意を促している。

 県警地域企画課によると、7月末までの今年の県内の山岳遭難は61件71人で、前年同期の32件34人を大幅に上回っている。例年よりも多い残雪などが春の行楽シーズンを中心に影響を与えたとみられる。本県の過去5年の遭難発生状況は【グラフ】の通り。最も多かったのは2022年の74件、23、24年も60件を超えるなど高水準が続く。山岳遭難の増加は全国的な傾向で、登山ブームやレジャーとしての人気の高まりなどが背景にある。警察庁のまとめによると、昨年の発生件数は2946件。統計が残る1961年以降で3番目に多かった。

 夏山シーズンとなる7~8月の遭難の原因は、県内では「転倒」が約35%と最も多く、「道迷い」が約23%、熱中症などの「発病・疲労」が約19%と続く。日本山岳会福島支部によると、この時期は比較的低い山で、生い茂る樹木により登山道を見失う危険が高まるという。

 同支部は山岳遭難の増加を受け、初心者向けの安全登山講習会を今年から始めた。道迷いの防止に役立つ地図とコンパスの使い方を学ぶ7月の実践講習では、参加者が地図を手に現在地を確かめながら浄土平(福島市)から一切経山まで歩いた。衛星利用測位システム(GPS)を活用したスマートフォンの地図アプリで進路を確かめる登山者も多いが、渡部展雄支部長(78)は「電池が切れれば使えなくなる。そんな時に地図とコンパスが力を発揮する」と説明する。

 転倒の防止には装備を適切に活用することも有効だという。受講する福島市の女性(74)は「なるべく身の回りにあるものを使おう」と道具には無頓着だったが、足の負担を軽減させるストックを購入し、実践講習で使用方法を確認した。「若い時は力任せに登ったが、今は道具で足腰の力を補わないと安心して登れない」と女性は話した。渡部支部長は「近くにあるから、知っている山だからと油断は禁物。山に入る際は準備を整え、気を引き締めてほしい」と訴える。

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