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【8月13日付社説】使用済み核燃料/県外搬出へ安全性の確保を

2025/08/13 07:30

 東京電力が、原発事故当時に福島第1、第2原発で保管していた使用済み核燃料の一部について、青森県の2施設に搬出を検討する計画を初めて示した。原発敷地内での際限ない保管を避ける意味では一歩前進だが、東電は実現に向け核燃料の健全性や安全性の確保などの対策を講じる必要がある。

 国は、原発の使用済み核燃料を再び燃料として利活用する「核燃料サイクル」を政策として掲げている。ただ、その中核施設である青森県六ケ所村の日本原燃再処理工場は完成目標が何度も延期されており、全国の原発では使用済み核燃料が行き場のないまま保管される状況が続いている。

 そのため、東電は日本原子力発電と共同で、同県むつ市で核燃料を「中間貯蔵」するためのリサイクル燃料備蓄センターを整備してきた。東日本大震災を挟んで工事は完了し、昨年11月に事業がスタートした。今回の計画は、東電がこの状況を踏まえ、核燃料をセンターと再処理工場にどのように移送するかについて現段階の考えを地元に示したものだ。

 青森県の宮下宗一郎知事は、福島第1、第2原発からの受け入れを巡り「安全性が確認されることが前提」と述べた。東電は、核燃料は中間貯蔵などに問題ないとの見解を示している。東電は核燃料の管理状況の説明に加え、搬出前に厳正な検査ができるような体制の整備などを通じて、青森県側の懸念を払拭することが重要だ。

 搬出を予定する使用済み核燃料は、事故当時に第1原発の5、6号機と共用プールに保管していた約1600トンと、第2原発に保管していた約1650トンだ。一方で、メルトダウン(炉心溶融)や建屋が水素爆発するなどの事故を起こした第1原発1~4号機の約500トン分については、まだ持ち込み先は決まっていない。

 東電によれば、新潟県の柏崎刈羽原発の燃料搬出を先行させるため、第1、第2原発からの移送にはまだ数年かかるという。東電には、円滑な移送の準備と並行し、第1原発1~4号機の使用済み核燃料の健全性を評価する仕組みづくりを進めることを求めたい。

 第1原発には、原子炉建屋から使用済み核燃料の取り出しを終えていない号機がある。核燃料は共用プールと仮保管設備で管理するが、7月末の段階で仮保管設備はすでに満杯、共用プールは容量の9割超が埋まっている。青森県への搬出までは、原発構内での保管を続けるしかない。国と東電は、設備の増設などを通じ、核燃料の保管容量を確保してもらいたい。

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