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【8月16日付社説】ガソリン減税/時代に即した制度に見直せ

2025/08/16 08:00

 半世紀にわたり「暫定」を続けてきたこと自体が、政治の不作為だ。代替財源だけでなく、時代に適した税体系の構築を求めたい。

 立憲民主、日本維新の会、国民民主など野党7党が、ガソリン税の暫定税率を11月1日から廃止する法案を国会に共同提出した。一部野党と自民、公明両党は廃止について「今年中のできるだけ早い時期に実施する」と明記した合意文書に署名しており、秋の臨時国会で成立する公算が大きい。

 ガソリン税の本来の課税額は1リットル当たり28円70銭だが、道路整備の財源確保のため、1974年から暫定税率の名目で一定額が課せられている。現在、25円10銭が上乗せされており、廃止になれば、その分が事実上の減税となる。

 暫定税率を巡っては、昨年末、衆院選で過半数割れした与党が補正予算案成立のため国民民主の求めに応じて廃止に合意した。しかし野党が通常国会に共同提出した廃止法案は衆院で可決されたものの、参院では過半数を占める与党が採決を見送り、廃案となった。

 先の参院選で野党は物価高対策として廃止を訴えた。参院でも少数与党に転落した自民、公明両党が民意を踏まえ、廃止を受け入れるのは当然の判断だ。

 野党はガソリン税の暫定税率の廃止に伴う減収分を年約1兆円と見込んでおり、代替財源の確保が最大の焦点だ。野党からは、税収の上振れ分を充てるなどの案が出ている。与党はガソリンと同様に大型トラックなどで使用する軽油や重油の暫定税率の撤廃も視野に入れており、減収幅はさらに拡大する可能性もある。

 巨額の財政赤字を抱える中、恒久的な減税に踏み切るのであれば安定的な財源の確保と、歳出の見直しが不可欠だ。景気動向などに左右されない、将来に責任ある制度設計と同時に、道路整備や維持管理の在り方も検討すべきだ。

 廃止はガソリン消費の拡大につながり、脱炭素化の流れに逆行するとの指摘がある。自動車に関連する税制全般が、エンジン車を想定した制度設計になっていることの見直しを求める声もある。

 今後の電気自動車(EV)などの普及を踏まえ、脱炭素社会の実現を目指す政府の方針と矛盾しない税制を構築する必要がある。

 与野党の実務者協議では、急激な価格変動による混乱を回避するため、石油元売り各社に支給している現行のガソリン補助金を段階的に暫定税率分と同じ額まで引き上げる案が検討されている。廃止前の買い控えや需要の急増を招かぬよう対策を講じてほしい。

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