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【8月17日付社説】教員の確保/志望者の掘り起こし進めよ

2025/08/17 08:05

 教員免許を持っている人の掘り起こしと、本県の若者が地元の教壇を目指しやすい環境の整備が、教員確保の両輪となる。

 本年度の本県公立学校の志願倍率は、小学校が1.1倍で、東日本大震災後の2012年度以降、最低となった。全校種の倍率も2.3倍にとどまっている。

 倍率低下の背景には、採用数が多かった世代の教員が退職期を迎え、それを補うため採用数が増えていることがある。教員の仕事は休みが少なく、保護者への対応も大変といったイメージが広まり、敬遠する傾向が強まっていることも影響しているとみられる。

 県教委は、低倍率でも資質がないとみなした志願者を採用することはないとしているものの、一定以上の倍率で選考が行われることが望ましい。優秀な教員の確保に向けて、志願者を増やすのは喫緊の課題だ。

 採用の軸となるのは、大学卒業時に教員になろうという志願者だ。ただ、採用試験の倍率低下は全国的な傾向で、優秀な志願者にほかの都道府県ではなく、本県の教壇を選んでもらう必要がある。

 県教委と福島大は連携協定に基づき、教員養成学部などへの進学を目指す「教育コース」のある県立高校の生徒を対象に、大学の教職課程の一部を先行履修する仕組みを導入する。同大に入学した場合には、単位として認定する。

 協定には、地元の就職希望者に一定の入学枠を設ける制度「地域教員希望枠」の新設も目標として盛り込んでいる。こうした取り組みを通じ、教員を志す本県の若者が県外に流出することなく、地元の教壇を目指す流れをつくっていけるかが問われる。

 教員のなり手は新卒ばかりではない。本県での就職がかなわず、県外で働く教員に本県での勤務を働きかけることは有効だろう。

 教員免許を取得していても、民間企業などで働いている人は多い。県教委はこうした人向けの相談会を開いており、相談者が講師として働き始めた例もある。正規雇用に当たる教諭となり、民間時代の経験が加味されても、同年代の教諭の給与水準に追いつくには、数年かかるという。

 収入減の恐れがあることは転職をためらわせるのに十分な材料となる。こうした条件で、民間で十分なキャリアを積んだ、質の高い人材を呼び込むのは難しい。収入の推移をある程度分かるようにするなど、県教委には優秀な人材に教員への転職を有力な選択肢として見てもらうために知恵を絞ることが求められる。

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