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【8月20日付社説】特定帰還居住区域/早期解除へ除染の加速図れ

2025/08/20 08:20

 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、将来の避難指示解除を目指す「特定帰還居住区域」は現在、帰還意向がある世帯などを中心に約2140ヘクタールが認定されている。国が希望者全員の帰還を目指すとした「2020年代」が半ばを過ぎたことを踏まえれば、地域再生を実現するための課題解決を急ぐ必要がある。

 双葉町は、町内の特定帰還居住区域のうち下長塚、三字(さんあざ)、羽鳥の3行政区の約110ヘクタールについて、26年度内の避難指示解除を目指す方針を示した。解除見通しが示されたのは同区域がある6市町村で初めてで、町には該当する地区の住民から「早く解除できるようにしてくれ」などと、おおむね前向きな反応が寄せられたという。

 特定帰還居住区域の避難指示解除には、除染の完了と上下水道などのインフラを復旧させることが条件となっている。国は、住民が古里で暮らす将来像を描けるよう、地権者の同意取得などの手続きのさらなる効率化を図り、解除の大前提となる除染を可能な限り加速させていくことが重要だ。

 特定帰還居住区域を巡っては、浪江町が対象区域での「準備宿泊」の受け付けを始めた。準備宿泊は、避難指示解除前に住民が特例として自宅に最長で3週間滞在し、生活環境を整える取り組みだ。ただ、14年に及ぶ避難中に家屋が老朽化し、建て替えや修繕が必要な場合も多く、現段階で実施できる世帯は少ないとみられる。

 県は帰還困難区域のある市町村と連携し、住宅の新築、修繕の費用を補助する制度を設けている。自治体の担当者は利活用を呼びかけるが、「もう少し支援を検討できないか」などの声が上がっている。国と県は、避難の長期化を考慮し、帰還意向を持つ人の意見を踏まえ集落環境を事前に整えるなど、住民個人の負担が軽減されるような対策を講じてほしい。

 大熊町と富岡町では現在、第2次の住民意向調査の集計が行われている。大熊町の担当者は「最初の調査の段階では、まだ先行きが見通せず帰還を決められなかった住民から連絡が来ている。学校の開校やJR大野駅西口の商業施設の開所などが良い判断材料になっているのかもしれない」と語る。

 特定帰還居住区域に家がある住民にとって、既に避難指示が解除された地区も含めた生活環境がどうなるのかが帰還を判断する決め手となる。国は、県や該当する市町村が地域再生のために計画している施設整備などを力強く後押しし、より多くの住民の帰還につなげていくことが求められる。

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