主食でありながら、現在の価格水準では購入に踏み切れない人が少なくない。政府は、困窮世帯や低所得者などを対象にした新たな対策を検討すべきだ。
政府は随意契約で小売業者などに直接売り渡した備蓄米のうち約10万トンについて、8月末までとしていた販売期限の延長を決めた。期限までに売り切れなかった事業者が希望すれば、9月以降も販売が可能で、割安なコメが引き続き店頭に並ぶことになった。
政府が価格を指定する随意契約の備蓄米については、2025年産の新米が出回る時期と販売が重なれば、価格下落の一因になるとの懸念が農業関係者などから強かった。このため販売期限は8月末に設定されたが、倉庫からの出庫や精米などの作業が遅れ、これまで消費者に届いたのは随意契約での放出量の約3割にとどまる。
政府備蓄米の放出に伴い、全国の小売店のコメ5キロの平均価格は9週連続で値下がりし、約千円安くなった。最近は価格抑制効果が薄れているものの、他に有効な価格対策は示されていない。流通が滞り、計画量が販売できていないのであれば延長は妥当な判断だ。
備蓄米を巡っては、随意契約に変更する前の一般競争入札で放出された分も、流通に時間がかかり店頭販売が遅れた。本来、備蓄米は凶作や災害発生時など緊急性を伴う場合に活用するだけに、必要な地域や人に迅速に届けることが重要になる。農林水産省は保管や出荷方法などを検証し、改善を図る必要がある。
これから25年産の新米の流通が本格化する。本年産は作付面積が拡大し、生産量が増えると期待される。ただ生産コストの上昇が農家の経営を圧迫しており、高温や渇水などが作柄に与える影響も懸念されている。
こうした状況を受け、新米の集荷競争は過熱しており、本県をはじめ全国のJAが農家に示した仮渡しの概算金は前年を大幅に上回っている。西日本などで生産され、すでに店頭に並んでいる早場米は5キロ4千円を超える高値で販売されている。
今後収穫される新米をはじめ、コメの平均価格は当面、高値で推移するのが確実な情勢だ。政府は増産を決定しているものの、このまま高値が長引けば、消費者のコメ離れを招き、農家も増産を決断できないだろう。
備蓄米販売は1カ月程度で終了する見通しだ。政府はコメ離れが加速することがないよう、備蓄米の追加放出なども視野に、割安なコメの安定供給に努めてほしい。