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【8月23日付社説】県の出生率目標/希望がかなう環境を整えよ

2025/08/23 08:10

 各年代がバランス良く存在し、互いを支え合うことが、安定した社会の続く前提となる。その実現に向けては、結婚したい人、子どもを欲しい人が感じている課題や不安を解消し、希望をかなえられるようにすることが急務だ。

 県が2030年の合計特殊出生率の目標をこれまでの1.80から、1.33へ大幅に下方修正した。昨年行った調査で既婚者、未婚者とも希望する子どもの数が低下して、目標値を大きく下回っているのを反映した。

 県は出生率の向上と、本県からの転出を抑えることで40年時点での人口を150万人程度にするとしている。ただ、修正した目標を達成した上で、転出超過を解消できた場合でも、40年の本県の人口は現在よりも約25万人少ない147万人まで減る推計だ。

 本県の出生率は全国平均をやや上回る水準で推移してきたが、24年には過去最低で、全国平均と同じ1.15に落ち込んでいる。行政が有効な手だてを見いだせていないのが現状で、新目標ですら実現は容易ではあるまい。まずは低下傾向をいかに食い止めるかが現実的な課題となる。

 下方修正の根拠となった調査によると、既婚者が予定する子どもの数は2.09人で、理想とする数より0.31ポイント低かった。未婚者も含めた子どもを持ちたい数(希望出生率)は1.72人だ。政府が掲げる1.80人より低いものの、これが実現できれば、修正後の目標を十分に達成できる。

 この調査で、既婚者に子どもを持ちたくない、または理想的な数の子どもを持たない理由を聞く項目では、5割超が「子育てや教育にお金がかかりすぎる」と回答した。全日本私立幼稚園PTA連合会の調査によると、居住自治体の「子育てしやすさ」を聞いた項目で、本県の回答の平均値は全国で8番目に悪い。

 出産や不妊治療の費用補助や、教育、保育分野の無償化など、国、県、市町村それぞれで支援策の充実が図られてはいるものの、改善の余地は大きいということだろう。金銭面をはじめとする不安の解消は、子どもを持つことに消極的な層に対して、出産などを前向きに考えてもらうきっかけともなり得る。

 同連合会は「情報発信が充実している都道府県ほど、子育てしやすいと感じる保護者が多かった」と分析している。行政は、出産と子育てに関する支援の充実と並行して、取り組みの発信にも知恵を絞り、子どもをつくる機運の醸成につなげてほしい。

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