昨年度の本県への移住が2700世帯、3799人となり、いずれも過去最多を更新した。人口減少が進む中、移住者の増加は地域の活力の向上をもたらす。県は市町村と連携し、さらなる移住促進に取り組んでいく必要がある。
移住者数は、県が市町村などからの報告を基に集計した。地域別では、県中地域が775人で最も多く、交通の便が良い中通りで増加が目立った。東日本大震災からの地域再生が進む相双地域は、2番目に多い764人だった。移住してくる前の住所地は、東京と神奈川、千葉、埼玉の1都3県からが全体の5割強を占めている。
NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京都)の昨年の窓口相談者による移住希望地ランキングで、本県は前年から三つ順位を上げ9位となった。同センターは、首都圏でのセミナー参加者を丁寧に移住相談に結び付けたことが功を奏したと指摘する。県は引き続き積極的に説明会などを開催し、地方暮らしに関心がある人の意識を本県に引きつけてもらいたい。
移住者を年代別に見ると40代までの割合が7割強で、若い世代が多い傾向にある。このため、県は県内で働くことに関心を持ってもらう交流イベント「ローカルシフトFUKUSHIMA」、本県ゆかりの20~30代に集ってもらう「ただいま、ふくしま。」を開くなどして、若年層への働きかけを強化している。
移住を決めるには、住環境に加えて就労先があるかどうかが判断材料となる。県は、本県に関心を持った人などを地元企業と結び付ける場として「ふくしまぐらし推進会議」を設け、県外からの人材の迎え入れに積極的な事業者の参加を募っている。県には、移住や2地域居住の希望者と企業側の双方のニーズを調整し、受け入れ環境を整えていくことを求めたい。
県は個人の移住に加え、テレワークなどが可能な情報通信関係の企業の事務所を誘致することを通じて移住者の増加を図ってきた。2023年度には県内にサテライトオフィスなどを設ける企業を対象に、最大2千万円を補助する「ふくしま企業移住支援事業補助金」を設けた。ただ、実際の移住に至ったのは1社にとどまる。
本県の家賃相場は首都圏よりずっと安く、果物などが豊富で温泉地も多い。各地には、先輩移住者や地域を盛り上げている若手経営者もいる。県は、本県に拠点を設ければ、首都圏に近い場所でより豊かに生活することを望む働き手の確保に役立つとアピールし、制度の利活用につなげてほしい。