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「百日ぜき」流行続く 福島県内感染者は昨年の60倍 インフルと同時警戒

2025/11/04 09:50

患者を診察する菊池院長。百日ぜきを含め、インフルエンザなどの感染症の同時流行を危惧する

 激しいせきが続く「百日ぜき」が過去最大の流行となっている。福島県内の今年の感染者は10月26日現在で1153人と昨年(19人)の約60倍に達した。県内では現在も週に20人前後と高水準の感染報告があり、流行シーズンに入ったインフルエンザなどと合わせて医療現場では対策に追われている。

 県内で最も百日ぜきの感染報告が多い郡山市。10月26日現在で383人の感染が報告されており、県全体の3割以上を占める。同市の菊池医院には7月ごろ週に2~3人ほどの患者が見られ、今も断続的に受診者が訪れている。菊池信太郎院長は「数年単位で訪れる流行期にある」と実感を口にした。

 百日ぜきは全数報告の対象で、県感染症発生動向調査週報によると、今年の感染者数は過去2番目に感染報告数が多かった2019年(283人)と比べても約4倍という異常な数となった。保健所単位では郡山市のほか、県中が163人、相双が122人、いわき市が114人、県北が111人と100人を超えた。

 1週間当たり98人の報告があった7月中旬をピークに減少傾向にあるが、例年を上回る報告数が続いている。

 菊池院長によると、患者は10代後半が多く「家庭などで大人に感染し、感染が広がっているのでは」と分析する。百日ぜきに加え、インフルエンザや新型コロナウイルス、昨年大流行したマイコプラズマ肺炎などとの同時流行もあり得ると懸念。薬の種類によっては手に入りづらく「感染症などで医療機関が逼迫(ひっぱく)した状況にある」という。

 菊池院長は「百日ぜきも含め感染症予防には免疫力を高めておくことも重要。規則正しい生活を心がけてほしい」と呼びかけた。

 乳児、重症化の恐れ 福島医大・山藤教授

 福島医大医学部感染制御学講座の山藤(さんどう)栄一郎主任教授(45)によると、百日ぜきは感染力が強く、家庭内など狭い空間での感染を防ぐのが難しい。風邪と区別がつかない初期症状の段階の感染力が一番強いため、百日ぜきを疑う頃には感染が広まってしまっていることが多いとする。感染した場合は「特に乳児は注意が必要で生後2カ月以内はワクチンを打てないため重症化するケースがある」という。

 予防にはマスクや換気のほか、ワクチンが有効。ただ、生後2カ月から始まる定期接種の後、追加接種は任意のため、ワクチンの効果が落ちてくる10代での感染が多い。治療は主に抗菌薬を処方するが、ほかの人にうつすのを抑える目的のため、薬を飲めばすぐせきが治まるわけではない。

 百日ぜきの流行は3~5年に1回程度の周期があり、国内では2007~10年ごろにも流行した。その後、そろそろ流行の周期という時期が新型コロナウイルス禍で、感染対策をしっかり取っていたため、百日ぜきも抑えられた。山藤主任教授は「今回まとめて流行が起きている可能性はある」と指摘している。

      ◇

 百日ぜき 百日ぜき菌が原因の呼吸器感染症。風邪の症状で始まり、次第にせきが激しくなる。名前の通り症状は長く続き、数週間から、人によっては月単位でせきが残ることがある。

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