• X
  • facebook
  • line

【11月23日付社説】「置き配」標準化/懸念解消が普及拡大の鍵だ

2025/11/23 08:05

 宅配便のサービスを維持するため、効率性が高まる仕組みを導入していく必要がある。

 荷物を玄関前や宅配ボックスに届ける「置き配」について、国土交通省が宅配便の標準サービスに加える方針を固めた。これまでは対面での受け取りが原則で、置き配に関する規定はなかった。物流業界の人手不足が深刻化するなか、不在などに伴う再配達を減らし、負担削減につなげる。

 インターネット通販などの普及が進み、いまや宅配便は生活に欠かせないサービスだ。国交省によると、2024年度の取扱個数は50億個を超え、10年連続で過去最高を更新している。配達日時の指定や配送状況を知らせるアプリの活用など、配送の効率化のための取り組みも進められている。

 しかし「配達に来ると知らなかった」などの理由で再配達が後を絶たない。宅配大手3社の今年4月の再配達率は9・5%に上る。再配達はドライバーの負担となるだけでなく、車両の走行距離が長くなり、二酸化炭素(CO2)排出量が増加する。温暖化対策に逆行する再配達の削減は急務だ。

 置き配はその有力な手段といえるが、荷物の盗難や汚損、送付状からの個人情報の流出などへの利用者の不安は根強い。第三者が敷地内を出入りすることへの防犯上の懸念などもある。

 トラブルは、宅配ボックスの活用で解消される可能性はあるものの、集合住宅に比べ、一戸建て住宅での設置は進んでいない。集合住宅でも宅配ボックスの数や容量が足りない、共同玄関のオートロックを施錠できず玄関先に届けられないケースなどが想定される。

 国交省はトラブルの防止策や発生時の対応などをまとめた指針を作成する方針だ。宅配業者などの現状や意見を踏まえ、あらゆる場面を想定した、きめ細かな対策を示してもらいたい。

 最近はスーパーやコンビニなどに、荷物の受け取りや発送ができる宅配ロッカーの設置が進んでいる。自宅に宅配ボックスがなくとも、ロッカーを利用すれば再配達の削減につながる。物流業界全体で宅配ロッカーの設置箇所などを拡充していくことも不可欠だ。

 配送の効率化などを検討してきた国交省の有識者会議の報告書には、再配達で別料金請求を可能とする案は盛り込まれなかった。ただ業者側が対面での手渡しの料金を置き配より高く設定することも予想される。利用者の選択肢が広がるのは歓迎できる。宅配業者には利用者の理解と納得が得られるサービスを提供してほしい。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line