冬季五輪初の同時決定は、IOCの焦燥感の表れだ。地球温暖化により、雪上競技を開催できる国は減少傾向。政府の財政保証がないフランスも条件付きでの開催を認めざるを得ず、拙速さが目についた。
30年は最有力候補とされた札幌市が東京五輪を巡る汚職・談合事件の影響もあって、昨年春ごろに「突如消えた」(IOC幹部)ことで目算は狂った。フランスメディアのベテラン記者によると、昨夏にIOCのバッハ会長が同国のマクロン大統領に30年招致の好機であることを伝えて招致の動きが加速したという。
34年まで一気に決めた背景には、気候変動への危機感が大きい。調査によると、地球温暖化の影響で開催要件を満たす国は40年までに「10」に減る見込みで、早めに五輪の運営経験がある有力な開催地の確保に努めた。
冬季五輪は26年ミラノ・コルティナダンペッツォ以降は欧米で3大会連続となり、38年はスイスと優先的に協議を進める。あるJOC理事は「五輪運動は欧米に戻された。札幌の失敗は世界を変えてしまった」と嘆いた。(共同)