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デビュー30周年の京極夏彦、自身の小説の映像化に挑んだ監督たちに共感 初の新作歌舞伎書き下ろしに苦戦「なんだこれは」

07/09 12:25

  • エンタメ総合
映像化の監督らに共感した京極夏彦 (C)ORICON NewS inc.

 歌舞伎俳優の松本幸四郎、小説家の京極夏彦氏が9日、都内で行われた歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』第三部『狐花 葉不見冥府路行(きつねばな はもみずにあのよのみちゆき)』の取材会に参加した。

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 本作は、京極氏が今回の舞台化のために執筆した完全新作で、「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」で知られる『百鬼夜行』シリーズや『巷説百物語』シリーズなどに連なる物語。7月26日に小説版として刊行し、その後8月4日から歌舞伎座で上演されるという新たな試みとなる。

 作中では、『百鬼夜行』シリーズの主人公・“京極堂”こと中禅寺秋彦の曾祖父・中禅寺州齋が生きる時代を舞台に、美しい青年の幽霊騒動とと作事奉行らの悪事の真相に州齋が迫る様が描かれる。歌舞伎版では、州齋役を幸四郎、萩之介とお葉の2役を中村七之助、上月監物役を中村勘九郎が務める。

 京極氏は1994年「姑獲鳥の夏」でのデビューから今年で30周年を迎えるが、歌舞伎への新作の書き下ろしは初となる。今回のタッグが実現した経緯について聞かれると、「お話をいただいたから(笑)」と笑い、「夢枕獏さんの『陰陽師』ですとか、最近はいろいろなものが歌舞伎化されていますよね。最初はそういったお話だと思い、光栄なことでございますとお受けした」と振り返った。

 しかし「最初の打ち合わせで『新作でお願いします』と頼まれた」と言い、「その段階でイヤだとは言えなかった(笑)」と苦笑いしつつ「『八月納涼歌舞伎』の第三部ってものすごいことですからね。しかも、脚本という形でというお話だったので、プレッシャーはありました」と吐露した。

 制作は「今まで通り」と言うが、「私は小説家ですから、文字ですべてを表さないと読者に申し訳が立たない。なので、映像化、舞台化しにくいものを書こうと思ってきたんです。それでも果敢に挑戦される方もいらっしゃった」と過去の映画化作品などを回顧しながら、「でも今回は、舞台化が前提だったんです」と自身の作品に挑んだ数々の監督や脚本家らと同じ立場に立ったことを伝える。

 そして「歌舞伎というものは役者さんの身体があって、舞台という装置があって完成するものですが、それは小説だと読者に読み取ってもらう部分なんです」と難しさも明かし、「映像化などをする際に、そこで多くの方が七転八倒の苦労をされてきましたが、今回それが僕の中で起きた。もう…なんだこれはと(笑)。そこでわりと苦労しましたね」と語った。

 作品の舞台や内容に関しては、「歌舞伎の新作ですから、まっさらなところから始めてもよかったんですが、私が書く意味を考えたところ、私のこれまでの仕事を多少なりとも反映させた方がより受け入れてもらえるのではないか」という意図のもとで執筆。

 主人公を演じる幸四郎は、京極氏の作品について「歌舞伎らしい絢爛豪華なものとはまた違う美しさを感じていた」と言い、「まさかそんな京極先生の作品を歌舞伎で演じることができるなんて夢のまた夢でした」と喜びつつ、「歌舞伎も感情的なものを感情的に表現するだけのものではないので、(京極氏とのタッグは)必然ではないか。やっとこの日が来たと思っております」と力を込めた。

 そんな幸四郎に向けて、京極氏は「幸四郎さんたちに演じていただいて初めて完成する作品」と託しながら、「私の作品はセリフ量が多く、理屈っぽいと言われる。特に主役の人のセリフが多いので申し訳ない気持ちもあります。どうぞよろしくお願いします(笑)」と伝えた。

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