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森田剛主演『劇場版 アナウンサーたちの戦争』伝説となった型破りな実況シーン(本編映像)解禁

08/08 06:42

  • 映画
NHKの和田信賢アナウンサー、左が本人の写真、右が『劇場版アナウンサーたちの戦争』(8月16日公開)の劇中写真(C)2023 NHK

 俳優の森田剛が主演する『劇場版 アナウンサーたちの戦争』(8月16日公開)より、本編映像の一部が解禁となった。

【動画】型破りな実況シーン

 本作は、太平洋戦争中、ナチスのプロパガンダ戦にならい「声の力」で戦意高揚・国威発揚を図り、偽情報で敵を混乱させるラジオ放送による「電波戦」に加担したアナウンサーたちの苦悩と葛藤、放送と戦争の知られざる関わりを描く。

 森田が演じる本作の主人公・和田信賢は、戦前から戦後にかけて活躍して国民的人気を誇り「不世出の天才」と言われた伝説の名アナウンサー。戦前には相撲・野球の実況や文芸作品の朗読などで名をあげ、ニュース、芸能番組でも大活躍した自称「フルコースのアナウンサー」。

 太平洋戦争では館野守男アナ(高良健吾)とともに開戦臨時ニュースと終戦玉音放送の両方に関わり、終戦直後に退職。その後、嘱託アナとして復帰し活躍した。ヘルシンキ五輪の実況を終え、パリで客死する。

 解禁となったのは、昭和15(1940)年2月、当時の国家行事の一つ、招魂祭をラジオで伝えるシーン。招魂祭とは、死者の魂を招きよせ弔う儀式で、靖国神社では戦没した軍人、軍関係者を御柱(神)として合祀する大祭で行われた。明治以来、大祭はほぼ春に行われていたが、日中戦争勃発後戦没者が増え、1938年(昭和13年)からは秋にも行われるようになった。

 厳粛な国家行事での静寂の中、ラジオから聴こえてきたのは、「母さん、元気かい――」と静かに語りかける和田の声。当時アナウンサーに求められたのは、原稿を力強く読み、国民の戦意高揚に貢献すること。しかし、この時の和田は、民衆を熱狂させる「声」とは真逆の、温かい「声」で、市井の人々に語り掛けるような型破りな実況をしたのだった。和田が届ける声の先には、電気屋に集まりラジオを聴いている人々、静かに耳を傾け、涙を流し聴いている者、戦死した息子の遺影を抱えて悔しそうな人の姿が映し出される。

 実在した和田は「虫眼鏡で調べて、望遠鏡でしゃべる」と話していたという。招魂祭の放送を担当するにあたっては、和田は遺族を綿密に取材し、全国民にその遺族の想いを届けるように語り掛けたのだった。

 森田は「和田さんは、とにかく調べて自分の言葉で表明する人だったので、そこにすごく魅力を感じた。僕らの仕事にも通じると思った」と語っている。

 演出を担当した一木正恵は 「『招魂祭』での囁くように民衆へ語りかける言葉について、森田さんは絶対にはまるだろうと確信を持っていました。舞台で張ったときの声の通り方や、ラジオで話す時のまさにあなたにだけ話していると思わせる甘い声。さらに森田さんが本来持っている朴訥とした雰囲気とか、そういったものが和田さんにはまると思ったんです」と振り返っている。

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